第8回 課題を抱えた家族を見つけた場合、どうするか

ケアマネジメントの過程において、家族が「虐待や引きこもり」といった「課題を抱えていること」が判明したとき、皆さんはどう考え、どのような支援をしているでしょうか。

   

対応時に心がけている5つのこと

私が「課題を抱えている家族」と出会ったときに気を付けていることを下記にまとめてみます。

(1)決めつけない
(2)一人で何とかしようと考えない
(3)結果を焦らない。待つべき時は待つ
(4)自分の立ち位置を変えてみる
(5)状況の背景を理解しようと試みる

順番に解説していきたいと思います。

(1)決めつけない

どうしても「虐待をしている家族」「引きこもっている利用者」という評価をしがちになります。虐待や引きこもりは、それ自体は事実なのかもしれませんが、好き好んで虐待したり引きこもっているわけではないでしょう。だから自分が一方的な評価を下し、かつその評価に固執する「決めつけ」は支援にとって絶対にプラスには機能しないと考えています。

そして一度「決めつけをする=レッテルを張る(ラベリング)」と、そこから抜け出すのは難しくなります。結果的に自分の思考を狭めてしまい、支援はうまく展開しなくなります。

(2)一人で何とかしようと考えない

虐待や引きこもりのケースは、背景に様々な要因が複雑に絡んでいることが多く、ケアマネジャーが一人で関わっても解決できないことがほとんどです。また一人で何とかしようとしてもどうにもならないことが多く、自身が消耗し、場合によっては燃え尽きてしまう結果になることも少なくありません。

虐待や引きこもりのケースは、早期に地域包括支援センターに相談を持ち掛けて一緒に動く、あるいは多職種からなる支援チームを組んで支援を展開するなど、多様かつ多角的な支援を考えることが最も重要な支援となります。

地域包括支援センターには遠慮なく情報を提供し、協働した支援を求めていくべきです。

(3)結果を焦らない。待つべき時は待つ

ともすると我々支援者は可能な限り少ない支援で結果を得ようと考えがちです。虐待等のケースは1回や2回面接等の支援をしたところで解決するほど容易ではありません。支援が長期戦となることを覚悟し、つぶれるのを防ぐために自身へのサポートも整えておく必要があります。「結果は簡単には得られない。だから結果が出なくても当たり前」という認識を持つことが支援の上で大切なことになります。

(4)自分の立ち位置を変えてみる

先に触れたように、一度決めつけをしてしまうとそこからなかなか脱出できません。そのため決めつけをしないようにすることが大切ですが、その際、自分の立ち位置を変えてみることも必要です。例えば、自分がこうだと判断していることに対して、「もし180度見方を変えてみたとき、全体はどういう見え方になるか?」と考えてみること。また、他の支援者など自分以外の人の価値観や視点を取り入れて行動してみることも必要ではないでしょうか。

どうしても我々は一つの価値観や視点にもとづいて業務をしがちになりますので、あえてそれを覆してみることで新たな気づきや発見が得られることが多くあります。

(5)状況の背景を理解しようと試みる

虐待等の原因は複雑です。直接的な原因と間接的な原因が絡み合い、融合体となって表面化しているわけです。ですから直接的な原因だけでなく、その背景となっているものは何なのかに目を向けてみることが大切です。

心理状態や関係性、生育歴や生活歴など、これまでの時間経過の中での動きなどにも着目し、情報収集をしてみることも必要と考えます。

まとめ

私はいわゆる「多問題家族」に遭遇したときには、これらの対応を基本としつつ、相談できる他のケアマネジャーの視点や価値観を活用し、さらに他の専門職へと拡大していくことで、多様な視点に基づく支援を展開するように心がけています。

◆著者プロフィール 中村雅彦
1960年生まれ。主任介護支援専門員・社会福祉士。
日本社会事業大学を卒業後、特別養護老人ホームの生活相談員を経て、介護保険制度施行と同時にケアマネジャーに。独立居宅の管理者兼介護支援専門員として約15年務め、現在は北アルプス医療センターあづみ病院の居宅介護支援事業所に勤務。前長野県介護支援専門員協会会長、日本介護支援専門員協会長野県支部代議員、介護支援専門員実務研修・専門研修講師、松本短期大学非常勤講師等を歴任。日本介護支援専門員協会には幾度となく現場目線からの提言をしている。優しい眼差しと熱い口調でケアマネの養成に勤めている。趣味はスポーツと読書。

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