管理者要件の経過措置延長を考える(1)

11月15日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚労省側から「居宅介護支援の管理者要件にかかる経過措置について」の見直し案が提示されました。2018年度改定で、「居宅介護支援の管理者要件に主任ケアマネを加える」という厳格化が図られたわけですが、見直しが行われる可能性も出てきました。

厚労省が打ち出した見直し案を改めて整理

本ニュースでもふれてはいますが、今回の見直し案を改めて整理しておきましょう。

(1)「管理者=主任ケアマネ」のための経過措置の期間を、当初の2021年3月末から6年(2027年3月末まで)延長する。(2)(1)については、2021年3月末時点で管理者になっている者が「主任ケアマネを取得していない」ケースを対象とする。(3)つまり、2021年4月以降に新たに管理者になった者は、「主任ケアマネである」ことが求められる、となります。

上記についての例外規定案は、以下のとおりです。(4)特例地域居宅介護支援加算(離島、山村、豪雪地帯等に所在する事業所が算定する加算)、または中山間地域等(半島、農山村、過疎地域等)における小規模事業所加算(1月あたり実利用者数が20人以下)を取得している事業所については、管理者を主任ケアマネにしない取り扱いも可能とする。(5)上記(3)のケースで、不測の事態(やむを得ぬ事情で管理者が交代する、など)により「主任ケアマネを管理者にできない」状況が生じた場合に、事業者がその理由を付した「改善計画書」を保険者に提出すれば、要件適用を1年間猶予するといった案になっています。

主任ケアマネ取得へのポテンシャルの低さ

もともと2018年度改定にかかる介護給付費分科会の審議報告では、管理者要件の変更を巡る影響を測るべく「人材確保の状況について検証するべき」という継続課題が付されていました。つまり、2018年度の介護報酬改定の影響に関する調査研究を通じ、「主任ケアマネの育成状況」を見極めたうえでの「見直し」も想定されていたわけです。

一方、現場レベルでは、当初から「経過措置期間の延長は避けられないのでは」という見通しが強まっていました。なぜなら、管理者要件の見直しが議論された際、提示されたデータ(2016年度のケアマネ業務等の実態調査)で、「管理者が主任ケアマネでない」という事業所割合は5割を超えていたからです。

ちなみに、当時の(主任ケアマネの配置が要件となる)特定事業所加算の算定率は約26%。もちろん、特定事業所加算の算定要件は「主任ケアマネの配置」だけではありません。それにしても、居宅介護支援の収支差率の低さと比較して、「事業所で主任ケアマネを取得させて特定事業所加算の取得を目指す」ことへのポテンシャルの低さが際立ちます。

このあたりは、主任ケアマネ研修費用が全国平均で4万3,690円、更新研修が3万4,670円(いずれも2017年度)という負担が重荷になっていることは当然考えられるでしょう。ちなみに、主任ケアマネの更新はケアマネの更新への読み替えが可能ですが、平均費用は(ケアマネの更新研修が2回目以降として)1万2,000円ほど高くなります。地域医療介護総合確保基金の活用による一部助成も、実施している都道府県は主任ケアマネ研修で17、更新研修で14にとどまっています。

管理者要件見直しの出発点に立ち戻ってみる

もっとも、いくら(研修コスト等との兼ね合いで)ポテンシャルが低いとは言っても、いずれは基準不適合となってしまうとなれば、事業者側も動かざるを得ない──これが厚労省側の見通しでしょう。そのうえで、当面のハードル(主任ケアマネ研修に必要な実務経験)をクリアさせるというのが、今回の見直し案ということになります。恐らくは、今後総合確保基金の(主任ケアマネ研修費用補助に向けて)使途の優先化を図るなど、何らかの予算措置も講じられることになりそうです。

しかし、それで本質的な問題が解決されるかといえば、視界良好というわけには行きません。なぜなら、この「管理者=主任ケアマネ」がケアマネジメントの質の向上へと本当につながっていくのかという「そもそも」の出発点が深掘りされていないからです。

この改定が行われた根拠として、「事業所内検討会の定期開催」や「同行訪問によるOJT」など、事業所のケアマネ育成・支援において「管理者=主任ケアマネ」である方が実現性は高いというデータがありました。しかし、それはあくまで「結果」の一つにすぎず、実現性の高さに「他の要因」があるのではという仮説は常に付きまとっています。

たとえば、母体法人に資力があり、事業所内検検討会や同行OJTにそれなりの「手当」が出せるという事情があるかもしれません。そうした事業所なら、主任ケアマネの研修費用も出しやすく「管理者=主任ケアマネ」もクリアが容易になります。結局は、事業所収益が問題という可能性も高いわけです。

こうした点をきちんと検証しなければ、見直し案が仮に施行されても、現場の混乱はさらに大きくなりかねません。この見直し案により、現場にどのような影響がおよぶのか。本質的な問題を解決していくうえで、真に必要な課題は何か。次回さらに掘り下げます。

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