住宅型有料の質の確保に必要な視点

10月28日の介護保険部会では、「介護サービス基盤と高齢者向け住まい」がテーマとなりました。ここで述べる「高齢者向け住まい」とは、たとえば住宅型有料ホームやサ高住などを指します。建物本体は介護保険の法令外ですが、厚労省はどのような施策ビジョンに踏み込もうとしているのでしょうか。

住宅型整備が介護付きを上回る時代に

厚労省は、「地域包括ケアの考え方を推進し、高齢者が住み慣れた地域において自分らしい暮らしを人生の最期まで続けるために、高齢者向けの住まいの確保は重要な課題」と位置づけています。しかしながら、登録制となっているサ高住はともかくとして、住宅型有料の場合は、人員基準や運営基準について法令上の規定はありません。そうした中で、質の担保をどのように図っていくか──今介護保険部会では、この点を課題としています。

この論点に踏み込む前に、住宅型有料の利用者・整備状況を確認しましょう。介護保険部会に提示された資料によれば、2018年の住宅型有料の利用者(入居者)数は約27万人にのぼります。一方、介護付き有料(特定施設入居者生活介護)の利用者数は約24万人となっています。実は、2016年までは住宅型よりも介護付きの方が利用者数は多かったのですが、2017年から逆転している状況です。

一方、直近3年間の新規の整備量(定員数)を見ると、介護付きが約2万人分に対し、住宅型は約8万人分と4倍近い開きがあります。ちなみに、特養ホームの整備量は約4万4000人分で、こちらと比較しても住宅型は倍近いスピードで伸びていることがわかります。

やはり根っこには人員不足問題が横たわる!?

この住宅型の急増には、もちろん団塊世代が高齢期に入ったことや、その世代の多くが高度成長期に入手した住まいの老朽化などの要因も上げられるでしょう。しかし、もう一つの背景として、近年の介護人材不足も直観的に頭をよぎるはずです。

たとえば、介護保険法令上の人員基準を満たさなければならない介護付きの場合、必要な人材確保は非常に困難になっています。これに対し、法令上の人員基準が定まっていない住宅型であれば、人材確保にかかるハードルは(あくまで比較の問題として)低くなります。母体法人としては、住宅型の方が「参入しやすい」ということになるわけです。

仮にこうした背景があるとして、住宅型有料のサービス(外部からの介護サービス提供を除いた有料ホームの定義に位置づけられたサービス)にかかる人員がぎりぎりまで削がれているのでは──そうした懸念が浮上します。先に、住宅型有料における入居者の孤独死ケースが発生していますが、これも上記のような事情が絡んでいる可能性があります。

もちろん、住宅型の入居者が介護保険を使うとなった場合、そのサービスを提供するのは外部の事業者です。しかし、サービス事業者としては、利用者の日常生活状況を把握するうえで、ホーム側のスタッフとの連携は欠かせません。この連携が密であるかどうかで、利用者の生活の質も左右されやすくなります。仮にホーム側の人員不足から、入居者への対応の質が著しく低下することがあれば、外部の介護サービス(ケアマネジメント含む)による自立支援の効果も損なわれかねません。

スタッフ保護の視点がないと質の担保は困難

こうした課題に対し、厚労省は地域支援事業における介護相談員を住宅型有料にも活用するなど、「外部の目」を入れる方策を論点としています。しかし、現状において介護相談員事業の市町村実施率は約25%、相談員の養成数も約4300人に過ぎません。

この規模のまま、約27万人という住宅型有料の入居者に対する相談援助を上乗せしていくことは非常に困難でしょう。仮に必須事業へと格上げし、介護相談員の育成増大を図ったとしても、それで「相談員の質が保てるのか」という問題が浮上してきます。

確かに、「とりあえず外部の目を入れる」ことを優先することにより、住宅型有料の運営の緊張感を高めるという効果はあるかもしれません。しかし、上記で述べたように、課題の根っこに「絶対的な人員不足」があるとするなら、相談員がその実情をくみつつホーム側スタッフとの連携を図ることが重要になります。この点が軽視されると、業務負担を増しているホーム側スタッフとの間で、対立構造などが生じる危険も出てくるでしょう。

この点を考えた時、「ホームで働く側」に視点を当てたチェック機能を同時に検討することが必要です。たとえば、介護労働相談などの経験がある専門職、あるいは労働法規に詳しい法律職なども「外部の目」に加えていくことが求められます。入居する高齢者と働くスタッフの両方をサポートするビジョンがない限り、真の質の確保は難しいといえます。

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