自己負担導入にはセット施策が不可欠

10月28日の介護保険部会では、制度の持続可能性というテーマの一環として「ケアマネジメントにかかる給付のあり方」が議論されました。委員の中でも特に賛否が大きく分かれている論点ですが、仮に「ケアマネジメントに自己負担が導入される」として、ケアマネ実務への影響はどこまで広がるのでしょうか。制度全体を見渡しながら掘り下げます。

利用者・家族からの圧力増について考える

ケアマネジメントへの自己負担導入については、過去の介護保険部会でも反対論が根強く、そのつど見送られてきた経緯があります。その反対論で見られるのが、「自分たちの意向をもっと反映させるべき、という利用者・家族の圧力が強まる」という懸念です。

こうした懸念が現実となるのかについては、正確には予測しづらい面もあります。なぜなら、利用者の意向は本人・家族の置かれた状況等によって大きく変わるものであり、「有料化」の前後でその変化を測定する材料は乏しいからです。また、そもそもケアマネジメントにおいて「利用者の意向」は重要な要素の一つであり、本人の自立支援に資するような意向に迫ることは、「ケアマネの力量に左右される」というバイアスが加わりがちです。

そうなると、利用者負担がおよぼす影響については、反対・賛成の両立場からの「水掛け論」におちいる可能性が高くなります。多角的に負担増と給付抑制のポイントを探っている財務省などは、「議論が空転することで押し切りやすくなる」部分を狙っていると思われます。今のままの議論では、「ケアマネジメントの有料化」は押し切られる確率はかなり高まっていると言えるでしょう。

当事者を主体とした新諮問機関の創設を

立ち返りたいのは以下のようなポイントです。「有料化による利用者の意向変化を測定することは難しい」と述べましたが、介護保険の主人公は被保険者を含めた国民であるという点を考えれば、いずれにしても「測定しなければならない」のは国の責務です。その測定がしづらくなっているのは、主人公が制度にかかわれる間口が極めて狭いからであり、たとえば当事者団体のすそ野を広げて意見を求める場を広げることが欠かせないはずです。

現在、全国規模の当事者団体は、認知症の人と家族の会や老人クラブ連合会などがありますが、他にも地域単位では家族介護者の会などさまざまな団体があります。これらが一つに集結して、介護保険部会とは別に「当事者部会」を設け、制度見直しに際しては必ずその諮問を受ける必要があることを法的に定めることが望まれます。確かに実現ハードルは高いでしょうが、そもそも利用者の意向への影響を見極めるのなら、この新諮問機関の創設を「セットにする」のが筋でしょう。

もう一つのポイントは、仮に「利用者の意向把握はケアマネの力量に左右される」というなら、その力量(つまり資質)の向上に見合うだけのケアマネの処遇改善をやはり「セットにする」ことです。これは、単に「利用者の理不尽な要求が増える」などの懸念への対応というだけではありません。他にも「ケアマネの業務量が急拡大する要素」が潜んでいるという点から考えるべき問題です。

ケアマネ人材のさらなる減少が目の前に

今回のケアマネジメントへの利用者負担の導入で、かねて懸念されているのが「入口となる相談援助の段階から二の足をふむ」という利用者が増える可能性です。これにより、ケアマネによる早期のかかわりが滞るようになれば、表に出てきた時点ではかなり課題がこじれているケースの増加が想定されます。

そうなった場合、ケアマネの業務負担もさることながら、資源のすそ野が比較的狭い地域などは、こじれたケースをいったん整理する包括の業務負担も増えるでしょう。現状でも、包括の業務負担増(職員の法定労働時間オーバーが6割を超えるなど)が問題視され、「介護予防支援などを居宅介護支援事業所に移行させる」案が浮上しています。ケアマネジメントへの利用者負担導入が、巡り巡ってこれに拍車をかけることも考えられます。

そうなれば、現場のケアマネの業務負担は、(1)困難ケースの増大と(2)(現行で報酬が極めて低い)介護予防支援の担当増という2点を背負うことになります。この点を考えれば、先のケアマネの処遇改善に加え、困難ケース受託にかかる加算(特定事業所加算の上乗せ含む)や介護予防支援の報酬増など幾重もの対策が講じられるべきでしょう。

以上の点を考えた場合、利用者負担の導入は、果たして財政健全化に向けた「費用対効果」の面で有効策となるのでしょうか。介護保険部会でも、こうした検証はさらに必要です。仮に「居宅介護支援やケアマネの処遇改善にかかるお金は出さない」という一方的な施策となった場合、これは大きな負のメッセージとなります。ケアマネ人材が、もう一段急減するという事態が目前に迫っているという危機を見すえなければなりません。

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