ケアマネの処遇改善、具体策は?

10月9日の介護保険部会で、「地域支援事業のさらなる推進」の一環としてケアマネの処遇改善が浮上しました。基準改定等で業務負担が増える一方、処遇改善がなかなか進まず、介護保険制度を支えるケアマネの存在基盤が揺らいでいます。厚労省としても、遅まきながら危機感を抱き始めたことになります。

処遇改善に向けて考えられる4つの施策

ケアマネの処遇改善が論点に上がったと聞いて、現場のケアマネとしてはどのように考えるでしょうか。一定の期待を抱くと同時に、さまざまな疑問や憶測をめぐらせる人も多いのではないでしょうか。「どのような形で処遇改善を図るのか」、「財源の確保などが壁となって期待したほどには進まないのでは」、あるいは「多少の処遇改善以上に新たな業務負担が増えるのではないか」という具合です。

こうした疑問や憶測に対して、予想される施策の行方を掘り下げてみましょう。ここでは、処遇改善の具体策を入口とします。考えられる施策は、大きく分けて以下の4つです。

(1)基本報酬の引き上げ、(2)ケアマネを対象とした新たな処遇改善加算の設定、(3)その他の加算(特定事業所加算など)の引き上げや新区分の創設、(4)(1)~(3)にプラスする形で運営基準の緩和等による業務負担の軽減を図る、といった施策を上げることができるでしょう。

処遇改善に「条件」が付されるという流れも

(1)に関して言えば、周知のとおり、居宅介護支援事業所の平均的な収支差率は2017年度の実態調査ではマイナス1.4%(税引き後でマイナス1.7%)となっています。2018年度改定で基本報酬は若干のプラス改定となったわけですが、その影響を示す経営概況調査の結果は今年12月に発表される予定です。

たとえば、介護保険部会の取りまとめで「収支差率を全サービス平均(2017年度でプラス3.3%)まで引き上げることを目標として、基本報酬のプラス改定を図る」といった記載がなされるとします。それを受けて、来年の介護給付費分科会で具体的な改定率を打ち出すという流れになる可能性もあるでしょう。

ただし、その場合の財源確保に向けた政府内の攻防が激しくなるのは避けられません。具体的には、財務省の首を縦に振らせるために「ケアマネジメントへの自己負担の導入」が規定路線となる可能性が高くなります。

ましてや、収支差率を全サービス平均にまで引き上げるとなれば、少なくとも1割近い基本報酬のアップが必要になるでしょう。となれば、財務省の打ち出す「原則2割負担」をケアマネジメントにも適用するという流れになってくることも考えられます。

これまで「0」だった負担をいきなり「原則2割」にするというのは、職能団体(ケアマネ依存の高まる医師会等も含む)の反発も相当に強いはずです。そこで、処遇改善に的を絞った(2)の方法をとる、あるいは、(3)によって結果として処遇改善につながるような事業者努力をうながすという方策も考えられます。(4)(ケアマネ側の文書負担軽減を最優先するなど)の施策とセットにしながら、(2)、(3)を進めるという可能性もあるでしょう。

「政府内取引き」的な動きがもたらす副作用

いずれにしても、政府内でのさまざまな力関係を考慮した場合、落とし所は非常に難しくなります。問題は、厚労省が「ケアマネの処遇改善」という「形」にこだわるあまり、さまざまな実務改革を「条件」として一気に進めてしまうことです。ケアマネジメントの標準化事業の適用しかり、ICT等による業務改革しかり。管理者要件見直しの経過措置も、主任ケアマネの取得要件の緩和策などを提示しつつ、予定通り進めることも考えられます。

そうなった場合、事業所規模によって改革への対応力にますます大きな差が生じかねません。小規模事業所などは、処遇改善の恩恵を受ける前に事業が成り立たないという危機に立たされるでしょう。結果として、ケアマネの総数は確保できても、事業所間の転職が進んだり、大規模法人による事業所の吸収・合併が急速に進むかもしれません。国としても、それを「後押し」するための大規模法人化に向けた施策を加速させると思われます。

当然ながら、地域における事業所の偏在化や、それが利用者におよぼす影響、業務環境の激変によるケアマネの生活や心身にかかる負担が大きな課題として浮上しかねません。

昨今の台風被害をはじめとする自然災害にかかるケアマネの動きを見ても分かるとおり、高齢者の自立支援・重度化防止以前に、ケアマネの存在が地域社会そのものを支える存在になっています。そのケアマネの偏在や疲弊が進めば、地域社会そのものの崩壊につながる恐れも高まります。その点を考えても、ケアマネの処遇改善は「無条件」を前提としつつ、まずは安定的な業務環境を整えることが最優先のはず。政府内の取引きめいた拙速な動きは、介護保険の枠を超えた地域不安を呼ぶことを頭に入れる必要があります。

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