今年のH.C.Rから垣間見える市場課題

2019年9月25日から27日までの3日間、有明の東京ビッグサイトで第46回国際福祉機器展(H.C.R)が開催されました。会場に足を運んでみて、特に目をひいた展示やこれからの制度の行方との絡みで考えさせられるポイントなどを取り上げてみましょう。

延べ入所者数は前年より1万人以上減少

今回、3日間ののべ入場者数は105,675人、昨年と比較して約1万人以上少なくなっています。過去の入場者数動向を見ると、報酬・基準改定の前年に増え、改定の翌年に減少するという傾向があります。改定の動向が見えた時点で来場者の関心は高まり、その後はやや落ち着くという流れがあるのかもしれません。全国的にこうした福祉機器にかかるイベントも増える中で、来場者が分散しているということも考えられます。

とはいえ、対前年比で10%以上の減少というのは気になるところです。高齢者介護や障がい福祉をめぐる先行きが、「あまり明るくない」ということの現れなのでしょうか。介護報酬の締め付けも厳しい中で、さまざまな設備投資や備品導入に二の足をふむ事業者・施設が増えているといった背景もありそうです。

来年の開催時期には、制度の見直しとともに介護報酬・基準改定の行方も明らかになっていると思われます。その時点での盛り返しがあるのかどうか。ポイントとなるのは、国が力を入れるICT等による実務改革の流れでしょう。ここ数年、H.C.Rでも情報通信関連のブースなどが拡大しつつあります。このあたりに特に注目してみたいと思います。

センサー類の市場参入はさらに増える可能性

たとえば、近年の進化の著しいものの一つがセンサー技術です。寝台にセンサーマットを敷くことで、利用者の起き上がりを感知するもののほか、心拍、呼吸、体動などを確認しつつ、睡眠の深さも計れるものなど、多様化・多機能化が進んでいます。居室やトイレでの転倒などの危険予測をAIと3Dセンサーで感知するといったものも見られました(シルエット画像により、プライバシーは保たれる)。

ちなみに、2018年度改定では、現場でのセンサー活用を加算要件に反映させたしくみが初めて誕生しています(夜勤職員配置加算の要件緩和)。緩和内容は決して大きいものではありませんが、重要なのは、「誕生時は小さくても改定を重ねる中で拡大が図られる」という厚労省の施策傾向です。その点で、2021年度改定では、介護ロボットのうちのセンサー活用を介護報酬に反映させる動きがさらに広がる可能性は高いといえるでしょう。

現状の介護保険部会でも、現場の人材不足に対応するための業務改革の一つとして、センサー技術の活用をクローズアップしています。ここで報酬・基準への反映に向けた何らかの方向性が打ち出されれば、開発メーカーの参入はさらに広がると考えられます。

現場の実用に沿った提案力がますます重要に

問題は、そのセンサー情報を事業所内、あるいは地域の多職種間でいかに共有するかというシステムです。ルーター設置や既存のナースコール連動によるローカル(事業所・施設内)運用のほか、クラウドサーバーを活用しての多職種共有など、こちらも多様です。また、センサー情報をタブレット等による介護記録と連携させるシステムや、外国人介護人材のためにタブレット側での多言語対応を可能とするシステムなどもあります。

いずれも、技術革新によって導入コストの低減が図られる方向にはあります。しかしながら、「自事業所でそれをどのように活用するか」というビジョンがしっかり描けていないと、費用対効果が現場の重荷になることに変わりはありません。H.C.Rなどでも、今後は効率的なシステム導入にかかるコンサルティングサービスなどを通じ、個々の現場の実情に沿った提案力を充実させることができるかが大きなポイントとなりそうです。

なお、厚労省は2019年度予算で、地域医療介護総合確保基金を活用したICTの導入助成をスタートさせました。また、(ようやくという感じではありますが)地域での多職種による情報共有に求められるセキュリティ基準の検討なども始まっています。

こうしたさまざまな予算措置などもにらみつつ、現場とのコミュニケーションを図りながら真に現場の負担軽減に役立つシステム開発が進められるのか。事業所間、地域間の「ICT格差」が広がらないようなインフラビジョンを描けるのかどうか。介護・福祉機器メーカーにとっても、問われる課題がますます広く大きくなっているのは間違いありません。市場全体が大きな分岐点に差し掛かっていることを頭に入れたうえで、次回のH.C.Rに注目してみたいと思います。

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