社会保障検討会議が最初にすべきこと

改造後の安倍内閣で、施策上の大きな目玉となる「全世代型社会保障」をテーマとした検討会(全世代型社会保障検討会議)がスタートしました。この検討会議を通じて、介護・医療などの現場に具体的にどのような影響をおよぼすのでしょうか。また、真に国民の合意が得られる改革案につながるのでしょうか。

2024年あたりまで慌ただしい改革が続々?

まず、今回の検討会議を通じた施策上のスケジュールを確認しておきましょう。西村担当大臣による第1回会議後の記者会見(9月20日)によれば、年内に中間報告、来年(2020年)夏までに最終取りまとめを行なうとしています。ただし、一部のテーマについては、「中間報告」に沿って来年の通常国会に法案提出がなされる予定です。先行して法案化されるのは、70歳までの就業機会の確保や年金受給開始年齢の柔軟化に関することです。

気になるのは、介護・医療等にかかる部分、特に負担と給付の関係についです。周知のとおり、介護保険制度については、2020年の法案化を見すえつつ制度見直しの議論が進んでいます。負担と給付の関係については、財務省などから介護サービスの利用者負担について「原則2割」とする案が出されています。また、ケアマネジメントに利用者負担を導入することや、軽度者(要介護1・2)の生活援助サービスなどを保険給付から外すといった改革案も論点の一つとなっています。

仮に、上記の内容が2020年に法案化されるとして、今回の検討会議の最終取りまとめは、それに「上乗せ」される形での法案化という可能性が高くなります。要するに2ステップを踏みながら、遅くとも2024年までに制度の姿は大きく変わることになりそうです。

ヒアリングだけで「国民合意」とされる流れ

問題なのは、慌ただしいステップを踏みつつ「国民の健康と暮らし」に大きな影響がおよぶのにもかかわらず、今回の検討会議の民間メンバーに現場の職能や業界の団体、労働団体の代表などが含まれていないことです。

これに対する担当大臣の見解は、以下のようになっています。一つは、厚労省管轄となる社会保障審議会や労働政策審議会、首相官邸における未来投資会議、社会保障制度改革推進会議の代表者が入っていること。要するに、各審議会で、職能団体の代表などがメンバーとなっていて、その代表として意見を述べる立場であるから問題ないというわけです。

さらに、与党(自民党・公明党)で並行して議論を進めていく中で、現場の声をヒアリングする機会を設けることが予定されています。担当大臣自身も、現場に足を運んでヒアリングを行なう意思を示しています。ただし、検討会議メンバーという立場での発言とヒアリングという方法では、その重みは変わってきます。ヒアリングはあくまで聞き手に主導権があるわけで、当事者による意思決定の参加からはほど遠いものとなりがちです。

実際には、国民の意向とは関係なく「トップダウン」で決めていく。そのうえで、「現場の声も聞いた」ことを国民合意の証とする──そうした流れとなるのが必定でしょう。

「全世代型」より「機会均等型」に力点を

一方、そもそも「全世代型」という文言自体が、国民の声を本当に反映しているのかという点にも踏み込む必要があります。たとえば、家族や世帯という単位で見た場合、家族の誰かに「介護」が必要となれば、他の世代にも負担のしわ寄せがおよびます。ダブルケアやヤングケアラーという課題は、まさにその象徴と言えます。政府が課題としている「介護離職」も、一つの社会保障上の課題が多世代におよぶことを前提としているはずです。

つまり、少子高齢化という流れの中で、給付と負担の世代間格差だけに目を向けるのでは、国民の実感とのズレが生じることになります。むしろ、正規社員と非正規社員、大企業と中小企業の各社員間で「介護休業」等の制度取得に差があることや、当事者が居住する地域によって社会保障資源に格差が生じていることの方が問題ではないでしょうか。

その点にスポットを当てたとき、スローガンとなるべきは「全世代型」ではなく、国民固有の事情にかかわらない「給付機会均等型」といった呼ぶ方がしっくりくるはずです。それが整ってこその「共生社会」や「一億総活躍」であるはずで、その順序が逆転すれば、一部の国力繁栄が多くの国民の疲弊の上に成り立つことになりかねません。

それを正すのは何かといえば、やはり現場や当事者が「どうありたいか」という点をすべてのスタートラインとするボトムアップ型の施策決定です。そのためにも、今回のような会議は、その意思決定のしくみを根本から見直すことを最初の課題と定めるべきではないでしょうか。今必要なことは、私たちすべてが真の納得を取り戻す機会にあるはずです。

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