サービス基盤整備に向けた動きを予測

2020年の制度改正に向けた介護保険部会の議論も、第2シーズンに入っています。今部会において比較的多くの時間が費やされているのが、2040年までをにらんだ介護サービス基盤の整備です。地域の実情に合わせた多様な拠点づくり例などが示される中、見過ごされている課題はないかを検証します。

都市部と地方部、それぞれの基盤整備の状況

部会内では、(1)これから介護ニーズが著しく高まる都市部と、(2)高齢者人口がすでに減少傾向に入っている地方部での介護サービス基盤のあり方の整理が進んでいます。この2パターンにおいて、厚労省はどのようなしくみに着目しているのでしょうか。制度の見直しの行方を絡めて整理してみましょう。

まず(1)ですが、都市部でのもっとも大きな課題は用地確保が困難という点です。これに対し、実践事例として紹介されているのが、公用地の貸与や優先的売却、民有地のマッチング事業、高層建築の一角に介護事業所や介護施設を組み入れるといった取組みです。

一方、(2)については、人口減にともなう廃校を特養等に改修するといった事例が示されています。また、すでに高齢者人口が減少に転じている地域において、特養の定員を減らしてサ高住に転換しているケースもあがっています。保健・医療・福祉・介護の機能を集積して一元化を図り、行政の保健福祉課や社協なども加わることで、多職種が毎日「顔の見える」関係を築けるしくみも見られます。

制度面でどのような手立てが考えられる?

こうした事例をいわゆる横展開するのであれば、制度面でどのような手立てが考えられるでしょうか。法改正を視野に入れるなら、たとえば以下のような流れが予想されます。

1.全国の市区町村の中から、高齢者人口の密度や将来(2040年など)に向けた介護サービスのニーズ予測などをもとに、上記の(1)(2)に該当する地域を指定します。

2.そのうえで、(1)および(2)に指定された市区町村に対して、介護保険事業計画にサービス基盤整備に向けた新たな記載項目を義務づけます。(1)であれば、介護サービス資源にかかる「用地確保等」にかかる計画。(2)であれば、高齢者人口減に対応する新たな拠点整備や上記で述べた特養の定員をサ高住に転換するなどの施策にかかる計画が考えられます。

3.2のような施策を介護保険事業計画に定めたうえで、さまざまな緩和策を制度上に位置づけます。たとえば、計画策定を条件として、介護保険の事業者指定をさらに緩和することなどが打ち出されるかもしれません。

すでに国会には、「地域再生法の一部を改正する法律案」が提出されています(閉会中審査)。その中で、住宅団地再生のための事業計画の策定などを要件として、計画内に定められる有料老人ホームの届出や介護保険事業所の指定などの緩和が図られようとしています。こうしたしくみを、介護保険法や医療法の中でさらに拡大していくというわけです。

一律の制度改正により「質」は担保できるか

上記はあくまで予測に過ぎません、しかし、介護サービス基盤を拡大するという場合、常に何らかの基準緩和がついて回るのは、過去の法改正を見ても明らかです。その点を頭に入れながら、今後の介護保険部会の議論を見ていくうえでのポイントとしたいものです。

そのうえで注意したいのは、特に(1)において、資源の量的拡大が図られた場合の「質」の確保です。先進事例であれば、地域のニーズや住民の意向、既存の制度との兼ね合いなどについて、行政担当者も視野を広くとりながら注意深く進める体質もあったでしょう。しかし、地方行政の体質は、残念ながら優劣の差がまだまだ大きいのが実情です。

そのため、しくみが制度上で一律化された場合、地方行政側のコントロール機能が未熟だと、地域住民とのコミュニケーションが不十分なまま劣悪な事業者が入り込みやすくなることも懸念されます。特に、国が「介護離職ゼロ」に向けた基盤整備の目標達成に焦り、地方行政へのプレッシャーを強めれば、どうしても隙が生まれやすくなるでしょう。

もちろん、地権者や事業者、住民代表などによる新たな協議体の設置(もしくは既存の協議体の強化)などが義務づけられるかもしれません。しかし、ことサービスの質(従事者の処遇や利用者の権利擁護などを含む)を確保するとなれば、協議体とは別に地域の主任ケアマネや社会福祉士、法律関係者の代表などをメンバーとした第三者機関のような体制も必要ではないでしょうか。

国が旗を振り、人口密集地で新たな市場が生まれるとき、そこにはどうしても不透明さが付きまといがちです。住民目線、現場目線で「安心」をチェックできるしくみを常にワンセットで考えることが、介護離職ゼロに向けた重要な下支えの一つとなるはずです。

コメント[15

コメントを見るには...

このページの先頭へ