保険外サービス活用とケアマネの本分

2021年度の介護報酬・基準改定で、ケアマネ実務に関連したテーマの一つを取り上げます。それが、「ケアマネジメントにおける保険外サービスの位置づけ」についてです。軽度者の保険給付の範囲が狭まりつつある流れの中、利用者のQOL向上を目指すうえで避けては通れない課題の一つとなっていきそうです。

保険外サービス活用について施策側の認識は

現在進行中の介護保険部会では、まだ突っ込んだ議論はなされていません。ただし、討議資料では「ケアプランにおける保険外サービスの活用」にかかる項目が示されています。具体的には、居宅介護支援の運営基準第13条の4の項目と、2017年度老健事業の「ケアマネジメントにおける自助(保険外サービス)の活用・促進に関する調査研究」(調査実施・株式会社日本総合研究所)からの抜粋です。

まず、前者の条項を確認しておきましょう。それは、ケアマネ実務上の努力義務を示したものです。具体的には、ケアプラン作成に際して「利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス、または福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう」努めるというものです。

このプラン上の保険外サービスの位置づけにかかる条項を示したうえで、「実際はどうなっているか」を後者の調査結果で示しています。それによれば、保険外サービスについて「生活支援領域で提供される単価制のサービス」を活用したことがあるケアマネは7割を超えるが、「単価制以外の多様なサービス」を3種類以上取り扱ったことがあるケアマネは35%にとどまるというものです。この「35%」という数字の大小については議論が必要ですが、いずれにしても「ケアマネによる保険外サービスの取扱い」について、現状では不十分という厚労省側の意図が浮かんできます。

サービスの価格・品質にかかる責任は誰に?

もちろん、保険外サービスの活用について、ケアマネ側がさまざまな課題を感じていることも事実です。実際、そのあたりは上記の調査研究でも取り上げられています。

たとえば、ケアマネに対して「保険外サービスの活用における課題」を尋ねた質問では、(1)本人や家族の所得・資産に関する情報の把握が難しい、(2)サービスの価格・品質が妥当なものかどうかの判断が難しい、(3)そもそもサービスを提供できる事業者が少ないという回答が目立っています。(1)に関連して、本人や家族の家計設計に関する意向の把握が難しいという回答も割合的には高くなっています。

保険外サービスの活用実態では、自費による単価制サービスの割合が高く、そうなると「本人・家族がその費用を払えるのか(あるいは、払ってもいいという意向が明確かどうか)」がポイントとなります。その前提に関する課題が(1)というわけです。こうした家計状況の把握について、調査では「相手に聞きやすいタイミングでの順次聞き取り・把握を心掛けている」という回答が目立っています。

ケアマネにとって、やや深刻な課題となるのが(2)でしょう。なぜなら、紹介した保険外サービスの質に対するケアマネの責任という課題が絡んでくるからです。事情は保険給付サービスでも同様ですが、行政による指定というバックボーンがなく、利用者の自費となるケースが多い中で、「質に対する責任を誰が負うのか」は常に問題となりがちです。

この点について、「本人・家族の(選択者としての)責任の認識を強調する方向に進めるべき」というケアマネが大半を占めています。「誰が責任を負うか」という点の制度的な環境が整わないと、積極的に保険外サービスを紹介できないわけです。逆に、ケアマネが所属する法人によるサービス提供という実態もある中で、「営業」的行為にかかる責任を明確にすべきという考え方もあるでしょう。

目的と手段が逆転したままの施策誘導は危険

そして、そもそも論となるのが(3)です。この場合、「適切な社会資源が地域にないのか」、あるいは「情報収集が足りないのか」によって見方は変わってくるでしょう。仮に後者だったとしても、そうした情報収集について、どこまでケアマネの業務範囲・責任とすることも大きな論点となりそうです。

こうして見ると、保険外サービスの活用を進めるのなら、省令改正などでケアマネ業務の誘導を図る前に施策上の下支えをいくつも設けることが欠かせません。それ以前に、国の目指す保険外サービスの活用が本当に「利用者のQOL向上」という目的に沿っているのかどうかを検証することが必要でしょう。

懸念されるのは、「保険給付範囲の縮小」ありきで「保険外サービスの活用を進める」という、目的と手段が逆転した構図が放置されることです。そうなれば、その逆転した構図のまま、ケアマネに保険外サービスの活用を強いる流れが強まりかねません。「ケアマネの本分」はどこにあるのか(利用者のQOL向上にあるのではないか)という視点を定め、それを介護給付がきちんと満たせる制度になっているのかどうか。保険外サービス活用の議論は、この土台から始めるべきでしょう。

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