介護予防支援が包括業務から離れる?

厚労省の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」(一般介護予防推進検討会)で、一般介護予防への地域包括支援センターの関与を期待する声が上がっています。一方、介護保険部会では、包括の業務過多や人材確保の困難さなどへの懸念の声が高まっています。

包括業務の評価指標などを再確認してみる

包括については、2017年の介護保険法改正により、いくつかの見直しが行われました。その見直し点を、まず整理しておきましょう。

(1)包括は、その業務について「自ら評価を行なう」ことが必要です。その「評価」などを通じて、事業の質の向上を図ることが義務化されました。(2)管轄する市町村に対しては、包括の事業実施状況にかかる「評価」がやはり義務化されています。(3)市町村は(2)の事業評価を通じ、必要に応じて包括的支援事業の方針変更などを講じなければなりません。

上記の「評価」については、7分野にわたる指標が示されています。その7分野と主な評価ポイントは以下のとおりです。

●組織・運営体制…3職種の配置状況、包括の住民への周知、個人情報の取扱いなど
●総合相談支援…相談内容の記録・把握、困難事例にかかる市町村との連携体制など
●権利擁護…虐待事例の対応策の共有、消費者被害情報の民生委員等への情報提供など
●包括的・継続的ケアマネジメント支援…ケアマネ対象の研修会等の開催計画策定など
●地域ケア会議…自立支援・重度化防止に資する事例検討会開催、議事録等の共有など
●介護予防ケアマネジメント・支援…予防プランへの多様な社会資源の位置づけなど
●事業連携…医療関係者との合同事例検討への参加、生活支援体制整備事業との連携など

なお、上記の指標については、2018年度から実施されている保険者機能強化推進交付金の指標ともリンクしているものがあります。

業務拡大で「何のための包括」という疑問が

こうした業務評価の厳格化とともに、国の事業拡大にともなって「企画・運営が求められる範囲」も広がりつつあります。たとえば、「介護離職防止」に向けた家族介護者支援のマニュアル提示(2018年7月)では、包括による出張相談等の幅広い取組み事例が示されています。あくまで事例提示ではありますが、組織体制が変わらないまま、こうした取組み実現へのプレッシャーが強まれば、既存事業の遂行が中途半端になってしまう恐れも出てくるでしょう。結局、「保険者方針のもと、形だけやる」といった風土も生じかねません。

こうした実質的な業務量の増大については、厚労省も認めていて、「人員体制に比べて非常に業務量が多いのでは、ということについて我々も認識している」(3月20日の介護保険部会より)という発言が見られます。

そうなってくると、そもそも「包括」とは何のためにあるのかという現場の迷いも浮上しがちです。上記の介護保険部会では、委員から「本来、何のために包括が設けられたのか」という疑問の声や「『本当に重要で、且つ本丸的にやらなければいけないことは何か』をもう少し明確にした上で、事業の切り分けも検討すべきではないか」という提案もあがっています。職員の増員についても、「そのための財源が不可欠」という発言も見られます。

業務切り分けが進んだ場合の行く先は?

こうした包括をめぐる難題の解決に向けて、一般介護予防推進検討会や介護保険部会で出ているのが「運営体制の大規模化」です。といって、圏域や法人の異なるセンターの統合は簡単ではありません。そうした中、介護保険部会などで上がっているのが、介護保険施設等との連携や事業の一体化です。人員確保については、現行の3職種に加えて、介護福祉士の配置を提案する声も出ています。

もう一つは、先に述べた「包括が担う事業の切り分け」です。介護保険部会の議論などを見ていると、「介護予防ケアマネジメントは包括業務から外していく」という意見も見られます。つまり、介護予防ケアマネジメントを包括からの委託ではなく、最初から居宅介護支援事業所に担わせるという流れです。

もっとも、報酬上の問題などから、現状でも「居宅介護支援事業所がなかなか受けてくれない」(介護保険部会の意見より)という声も出ています。この状況で「介護予防プランの作成業務をケアマネへと強制的に移行させる」となれば、居宅介護支援の経営やケアマネの処遇のさらなる悪化を招きかねません。

要支援者等の介護予防が「押し付け合い」になってしまえば、重度化防止に向けた施策の根幹が崩れるのは必然です。そうした中、一般介護予防だけにどんなに力を入れても施策の矛盾は拡大するばかりでしょう。包括の「きしみ」は、介護保険制度そのものが岐路に立たされていることの象徴と言えそうです。

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