ケアマネだけに頼らない包括支援を

今年10月の消費増税に合わせ、公的年金等の収入や所得額が一定基準額以下であるなどの要件を満たす人に対し、年金生活者支援給付金が支給されます。これに関連して、自治体を通じて介護保険施設等への協力依頼が発出されました。居宅のケアマネに関しては、どのような課題が想定されるのでしょうか。

申請主義による施策が拡大していく中で…

今給付金の受給に際しては、原則として日本年金機構から送付される給付金請求書を提出しなければなりません。また、老齢年金の新規請求者の場合は、今給付金の請求書が年金請求書との同封で送付されるなど、対象者によって手元に届く様式が変わってきます。そのあたりの対応についても、周囲の支援者よるフォローが欠かせなくなるでしょう。

問題は、家族など身近な支援者がいないケースです。昨今は還付金詐欺などの事件も多く、身近で相談できる人がいない対象者だと、疑心暗鬼から今回のような請求書類をそのまま捨ててしまったすることがあるかもしれません。今給付金に限らず、わが国では各種還付金なども含めて「当事者による申請」が原則となるしくみが多々あります。この状況下では、居宅ケアマネなどの支援専門職による関与が施策効果を大きく左右しかねません。

さて、高齢者の単独や夫婦のみなど65歳以上のみの世帯割合は、介護保険がスタートした時期と比べて15%以上の伸びを記録しています。そのうえで、申請主義を原則とした社会保障制度が複雑化するとなれば、当然ながら先に述べた外部の支援者によるサポートの範囲も今後はますます拡大することが想定されます。この点を頭に入れた場合、そろそろ高齢世帯による包括的な支援のあり方を根本から考え直す必要もありそうです。

高齢当事者の「何でもケアマネに頼る」流れ

厚労省は、地域共生社会推進検討会の中間取りまとめの中で、世帯内の複合的課題などへの包括的な支援体制の中で「伴走型支援」の概念を示しています。これらのしくみについては、来年の介護保険法や社会福祉法の改正を経ての制度化が想定されます。

この場合、基本的には課題分野ごとの専門職が(相談支援包括化推進員によるコーディネートのもとで)チームを組んで取り組むことになるでしょう。つまり、伴走型支援においてもチームでの対処が基本となるはずです。

しかし、高齢当事者の生活にかかる支援となった場合、今回のような給付金にかかるサポートなどは、介護保険の活用を入口として担当ケアマネが唯一の身近な支援者となる可能性も高くなります。利用者側も「日々の困りごとに関しては(かなりの範囲で)まずはケアマネに」という意識を持つようになるのが自然でしょう。この意識がある限り、複合化した課題についてチーム体制ができたとしても、(当事者にとっての)実質的な伴走者はケアマネと位置づけられてしまうわけです。

ここに、たとえば「ケアマネジメントに利用者負担が発生する」といった制度改正が加わったりすれば、利用者側に「お金を払っているのだから、もっといろいろ頼ってもいいだろう」という意識も生じかねません。仮に「チームによる伴走支援」という制度上の建前ができても、当事者のケアマネに対する依存度は際限なく膨らむ可能性もあるわけです。

伴走を専門とする新たなパートナーシップを

こうした状況を想定したとき、高齢当事者(あるいはその世帯)に対する包括的な支援体制を確立するのであれば、専ら「伴走者」に徹する専門職を新たに立てることもそろそろ考える必要がありそうです。以前も述べたことがありますが、たとえば、介護保険にかかわらず何らかの制度的支援が生じた人に対しては、セルフパートナーのような新たな専門職を設定することが考えられます。

こうした人材を立てることで、ケアマネであれば本来的なケアマネジメントに徹することができ、チームの中での自分の立ち位置も明確にすることができます。また、先のセルフパートナーとの情報共有を進める中で、より客観的な視点での「課題分析」を進めることも可能になるでしょう。ケアマネのみが日常的な伴走者となってしまうと、利用者の多様な訴えに振り回されることも多くなり、客観的な課題分析が疎かになる懸念もあります。そのあたりの改善も期待できるわけです。

もちろん、新たな予算措置も必要になるでしょう。しかし、チーム内各職種の専門性が最大限に発揮できるというメリットが認められれば、費用対効果という点では、専門職ごとの個別的な育成事業などに予算投入を続けるよりは、ずっと効率的ではないでしょうか。「今足りない人材は何か」について、現場目線・当事者目線での施策が求められます。

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