ケアマネジメント標準化策のゆくえ

2021年度の制度見直しに向け、社会保障審議会の介護保険部会での議論が続いています。さまざまな論点の中、ケアマネにとって気なるものの一つが「ケアマネジメント手法の標準化」でしょう。これは、そもそもどういうことか、制度の見直しの中で具体的にどのように反映されていくのか。改めて整理します。

2016年度から始まった調査研究事業の中身

ケアマネジメント手法の標準化については、2016年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、自立支援・重度化防止の推進を目的として、「適切なケアマネジメント手法の策定」を行なうとされたことが出発点となっています。これを受けて、厚労省の老人保健健康増進等事業において、16~18年度にかけて「適切なケアマネジメント手法の策定」や「ケアマネジメントにおけるアセスメント・モニタリングの標準化」にかかる調査研究が続けられてきました(詳細については、日本総研のHPで確認できます)。

まず、2016年度については、要介護認定の原因疾患の上位である「脳血管疾患」および「大腿骨頸部骨折」にスポットを当てました。そのうえで、退院直後から在宅生活の支援を念頭において想定される支援内容を整理し、ケアマネジメントの標準化にかかる検討案を作成。これを現場で実践活用したうえで、2017年度に活用効果の検証が行われています。その後、先の検討案に「心不全疾患」を加えたバージョンアップが図られています。2018年度以降は、さらに「認知症」を加えたうえで同様の検討が進められる予定です。

現場のケアマネにとって再確認したい項目も

では、標準化に向けた「支援のポイント」はどうなっているのでしょうか。調査研究の中から、脳血管疾患についてのアセスメントやモニタリングの項目一覧に目を通してみましょう。大きくは「退院後3か月まで」と「退院後4か月め以降」に分類され、前者は33項目、後者は34項目示されています。

この項目ごとの具体的な支援に向けて、アセスメントやモニタリングの着眼点が示されています。長年支援業務にたずさわっているケアマネにとって「今さら」というものもありますが、「そういえば確認漏れがあったかも」と気づく項目もありそうです。実際に利用者や各専門職と会う前に、頭の中を整理するチェックリストとして活用できそうです。

たとえば、利用者の状態像や療養環境、ADL・IADLだけでなく、疾患・障害に対する受容と新たな価値の獲得など、社会参加や生活の再構築に向けた利用者の心理状況についても押さえるべきポイントが示されています。その意味では、利用者の日々の言動中から「その人なりの自立の方向性」をとらえていくうえでも役立てることができるでしょう。

ただし、こうした項目を埋めていくだけで、実際のケアマネジメントが機能するというものでもありません。疾患や障害に向かい合う利用者の心理状態は、日々の多様な因子によって影響を受けています。たとえば、(ケアマネを含めた)専門職との関係性もその一つです。それゆえに、支援にかかわる当事者自身が、自分を見つめ振り返りつつ、「利用者にとってのよりよい伴走者」たりえるように成長を重ねる必要があります。これは、ケアマネにかかわらず、あらゆる医療・介護専門職にとって欠かせない職業意識の一つでしょう。

制度上への拙速な反映には弊害の恐れも

問題なのは、先の標準化項目が「制度」に組み込まれたとき、「それさえできていればOK」という職務評価が一人歩きしてしまう危険があることです。そもそも専門職自身が自身を見つめ振り返るというのは、(自分の足りない部分、未熟な部分と向き合うという点で)決して楽なことではありません。「できれば、そういった部分は省力化したい」という心理が頭をもたげがちになる中、多くのケアマネは「利用者支援には必要なこと」と割り切りながら自身を高める努力を続けています。

この支援専門職としてのストイックな労力がきちんと評価されてこそ、先のアセスメントやモニタリングの標準化が活きることになります。両者はいわば車の両輪であり、制度上の評価がどちらかに傾いてしまうと、それまで現場がぎりぎりで築いてきた専門職の職業風土が壊れてしまう懸念もつきまといます。

その点を考えたとき、標準化が「ガイドラインの作成」にとどまるものなのか、その「ガイドライン」を実務者研修に反映させていくのか、あるいは「ガイドラインの活用」を何らかの形で報酬上の評価にくみこむのか──それによって現場への影響は大きく変わってきます。報酬改定等の議論はまだ先ですが、現場の専門職なりにプライドをもって構築してきた(職業人としての)プロセスを軽視した議論にならないことを願いたいものです。

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