「通いの場」低迷の根っこはどこに?

厚労省の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」で、中間とりまとめ案が示されました。一般介護予防での「通いの場」への参加率が4.9%という状況の中、今検討会は「健康寿命の延伸」に向けた有効策は打ち出せているのでしょうか。そこには、ケアマネジメントにも通じる課題が潜んでいます。

その人にとっての「ふつうの暮らし」が大切

今検討会では、第2回会合で介護予防施策にかかる自治体からの事例報告が行われています。その中で「介護予防の考え方」として注目したいのが、愛知県豊明市のケースです。

豊明市といえば、2011年度という早期からICT(電子@連絡帳)を導入した医療介護連携の基盤を構築したり、総合事業において短期集中リハ(C型)をサービスの中心に据えるなど、意欲的な取組みが注目されています。デイケアの母体となる医療資源の厚さが目立つとはいえ、総合事業対象者のうち、6割がC型を利用しているというのは保険者として集中的な力の入れ具合がうかがえます。

特筆したいのは、形としての資源整備だけでなく、介護予防を機能させるための考え方です。軸となるビジョンは、本人の「以前していたふつうの暮らし」に戻すこと。介護予防は、あくまで、その「ふつうの暮らしに戻す」ことの結果に過ぎないというわけです。

当然ながら、「ふつうの暮らし」というのは、一人ひとり異なります。ケアマネジメントでいえば、まず「サービスありき」で、そこに本人を当てはめても、「その人にとっての元のふつうの暮らし」にはなりえないわけです。

この考え方を一般介護予防に当てはめれば、一般介護予防=体操教室でなく、その人にとっての「日常生活の場すべて」が対象となります。つまり、予防事業でよく言われる「通いの場」は、対象者にとっての「暮らしの場」すべてに当たるわけです。豊明市のプレゼンでは、この点をはっきりと訴えています。

重要なのは「不参加者」へのヒアリングでは

国はこうしたプレゼンの中から、好事例を抽出し全国の自治体への横展開を図ろうとしています。ただし、真に横展開すべきなのは、「出来上がった資源」の例ではなく、先の豊明市のような「入口となる考え方」ではないでしょうか。もっと言えば、地域の高齢者一人ひとりの「ふつうの暮らし」にいかに目を向けるかという点が重要になるわけです。

ケアマネジメントにおいては、その人の「していた生活」の姿を明らかにし、そこに「戻る」ことに対する本人の意欲に耳を傾けることが出発点となります。ここを出発点とした一連のアセスメントがなければ、自立支援に向けた道筋を描くことはできません。このことは、一般介護予防でも同様でしょう。

となれば、一般介護予防で大切になるのは、まず当事者、特に「参加していない・参加したくない」という人に対し、「その人が望む生活像」とは何かについて地道なヒアリングを重ねることでしょう。あるいは、自治体担当者が地域を歩き、高齢者が日常の中でどのような目的をもって、どんな場所に足を運んでいるのかという「地域の高齢者のしている生活」に目を凝らすことが基本となるはずです。

施策に人を「当てはめる」ことによるリスク

しかしながら、今検討会の中間とりまとめを見ると、先の豊明市などの軸となる考え方はどうも明確に反映されていないようです。通いの場の多様性を記してはいるものの、ほとんどは主体や機能などでの多様化を示しているだけです。また、「(通いの場に限らず)幅広い取組みが対象となることを明確にする」としていますが、入口となる当事者の声にどう配慮するのかという道筋は見えていません。

「通いの場」への参加を増やすための手段はどうでしょうか。ポイント付与や広報のあり方などは示されていますが、それだけで低迷する利用率の拡大につながるのかどうか。問題なのは、手段(通いの場の整備)と目的(本人にとってのふつうの暮らしに戻す、あるいは維持すること)が逆転している点にあるのではないか──そうした課題への切り込みについて、歯切れの悪さがぬぐえません。

この状態で、保険者へのインセンティブ強化が図られた場合、もっとも懸念すべきなのは「まず、通いの場を用意」し、そこに「人を集める」という流れだけが優先化しまうことです。まさに当事者不在の状況です。特に土台づくりがしっかりしていない自治体などの場合、結果を出すことに焦るあまり、「(通いの場へ)参加しないと要介護になってしまう」といった広報や勧誘が蔓延しかねません。

ここでポイントになるのが、介護予防にかかるもう一つの検討の場「介護予防WG」です。この第1回会合で、「地域づくり戦略」について解説した資料が提示されています。このあたりを糸口として、当事者の声にきちんと耳を傾ける「入口」が提示されるかどうか。こちらのWGの議論にも注目しましょう。

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