2021年介護保険改正を読み解く(4)~介護人材不足に制度はどう対応する?~

介護保険部会の議論が「介護人材不足への対応」という、最大の現場課題に踏み込みました。解決の方向性として示されているのは、介護人材の確保ともに「人材不足の状況でも現場を回していけるようにする」ための介護現場の革新です。

国が進めようとする「横展開」。具体策は?

最近、国の改革案でよく持ち出される言葉の一つに「横展開」があります。今回の分科会における論点提示でも、介護現場革新会議のパイロット事業について、その成果を「横展開」していくための方策を求めています。今年3月に公表された「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」についても、フォローアップをかけたうえでの横展開が進められていくことになります。

加えて、厚労省が提示してきたのが、他業種における働き方改革などの取組みです。医療、看護、保育といった社会保障系事業のみならず、建設業やトラック運送業、宿泊業の取組みも紹介されています。それぞれに業務仕分けや教育訓練、ICT活用などの事例が示されていますが、そうしたアイデアの介護現場への適用も検討課題と位置づけています。

もちろん、各業種にはそれぞれ特有の職務風土があり、業界ごとの特殊性を掘り下げないままに、国主導で「横展開」を図ることには大きな懸念がともないます。以前も指摘したことですが、国よる「上から主導」が一人歩きすると「できない現場が悪い」という空気が生じる可能性もあります。それによって「現場の働きづらさ」が増してしまえば、人材不足対応という施策課題では逆効果となりかねない点に注意が必要でしょう。

2020年の法改正に反映させるとなれば…

上記の点を頭に入れたうえで、制度的に国が手がけようとする方向性を予想してみましょう。現状では、以下の3つが考えられます。

1.周知・普及にかかる事業展開

2019年度から、地域医療介護総合確保基金(介護分)を使っての「介護事業所に対する業務改善支援事業」がスタートしています。

具体的には、生産性向上ガイドラインにもとづき、業務改善に取り組む事業所に対して、第三者がその取組みを支援するための費用の一部を助成するというものです。こうした事業を2020年度の予算措置で拡大したり、(ISO的な)新たな認証制度を創設するという方法も出てくる可能性があります。

あるいは、介護保険事業の大規模化(M&Aなど)・共同化を目指すしくみを整える中で、事業要件として生産性向上ガイドラインの遵守を求めることです。これについては、合同事業にかかる申請等の規制緩和も絡めつつ、下記2の法改正なども考えられます。

2.介護現場革新を法律で規定する

2020年半ばには、再び介護保険法等の改正が想定されます。その前に介護保険部会の取りまとめが行われ、その趣旨を法律に反映させるわけです。上記1で示した規制緩和以外でどんなことが考えられるでしょうか。

現場事情によって取組み方も変わる中では、法律によって具体的な強制力(例.一定規模以上の事業所はICT等を導入しなければならない、など)を持たせるのは難しいでしょう。となれば、以下の2つが考えられます。

1つは、市町村や都道府県に「介護現場革新のための基本計画の作成」を求めること。もう1つは、事業所に対して「(上記の基本計画にもとづいた)介護現場革新への努力」を義務づけることです。義務づけとはいっても、現実的には努力義務にとどまると思われます。

ただし、努力義務とはいえ法制化が提案されれば、業界・職能団体からは「新たな縛り」が生じることへの異論も強まるはず。条件として、基本報酬の増額などを求める声も高まると考えられます。もっとも、政府の概算要求基準における「社会保障の最大限の効率化」というアナウンスを考えれば、基本報酬の増額がすんなり実現するとは思えません。

サービス提供体制強化加算などに新要件?

3.2021年度改定での報酬への反映

基本報酬の増額が難しいとなれば、何らかの形で「介護現場革新」を絡めた加算措置がとられる可能性があります。考えられるのは、各種処遇改善加算の要件に「生産性向上ガイドライン」に示された取組みを含めることでしょう。ただし、事業所規模などによっては要件ハードルがかなり上がってしまうことも考えられます。そうなれば、現政権の目玉施策でもある(特定含む)処遇改善加算の効果が薄れてしまうリスクも付きまといます。

そこで想定されるのは、サービス提供体制強化加算(あるいは、特定事業加算)などの中に新区分を設け、介護現場革新への取組みを要件とすることです。たとえば、1で示した業務改善支援事業などへの参加を要件とするやり方も考えられます。具体策は来年の介護給付費分科会での議論に委ねられますが、介護保険部会でも、そのためのレール敷き(取りまとめの中で介護報酬上でのインセンティブ措置を求めるなど)が論点となりそうです。

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いずれにしても、「上から主導」だけで現場は動きません。以前から提案していることですが、全国キャラバンのような形で現場公聴会などを地道に開くことを本気で考える時期ではないでしょうか。「現場に改革を迫る」というテーマだからこそ、特定の事業所や業界・職能団体からのヒアリングだけでは、なかなか追いつかないことを心得る必要があります。

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