参院選後の臨時国会で注目したい法案

参議院選挙が終わり、8月から臨時国会が開催される予定です。次の介護保険法等の改正は来年の通常国会が主舞台となりそうですが、次の国会では介護・医療・福祉に関連して、どのような法案が審議されるのでしょうか。

目玉となるのは、やはり「認知症基本法案」

次期国会で介護・福祉関連の目玉となりそうなものといえば、まず与党が議員立法での成立を目指す「認知症基本法案」でしょう。

法案の軸となるのは、認知症の人の意思決定の支援や意向の尊重、尊厳の保持とともに、家族等に対する必要な支援を理念として定めたこと。また、その理念に沿って、国には基本計画を、都道府県、市町村には認知症施策推進計画の策定を義務づけたことです。

ただし、認知症の人や家族への支援を担う介護現場に関しては、サービス提供体制や連携体制の確保、人材確保・育成について、国や自治体に必要な措置を講じることを求めているだけです。今回の法案はあくまで基本法という位置づけなので当然でしょうが、たとえば介護サービスにかかる報酬設定などの施策に対して、どこまで「縛り」を設けることができるのかは定かではありません。

ちなみに、認知症関係当事者・支援者連絡会議が5月に出した共同提言では、「介護職は専門性の高い職業であり、その対価としての報酬を医療従事者などと同レベルに上げ、介護従事者の尊厳を高めること」を求めています。こちらはかなり突っ込んだ提言ですが、たとえば法案審議に際して連絡会議メンバーが参考人として「法案に意見する」といった機会が設けられるかどうか注目されます。

内閣提出法にも現場が知っておきたい法案が

さて、内閣提出法案では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律」の改正案が提出されています。ポイントの一つは、薬剤師が「調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行なう」ことの義務を法制化すること。また、調剤時の対面義務の例外として「一定のルールのもとで、テレビ電話等による服薬指導」を可能にするとしています。

これにより、たとえば在宅や施設、居住系の利用者に対する薬剤師の服薬指導の範囲やその手段(ICT等の活用)が大きく広がるきっかけとなりそうです。来年度の診療報酬改定でもオンライン診療等への評価が拡充される可能性があり、そこに薬剤師がどうかかわるかにより、医療職側のネットワークのあり方が変わっていくかもしれません。医療職との平時からの連携強化が義務づけられているケアマネとしても、今回の法案審議に注目しつつかかわり方の変化に注意したいものです。

また、「地域再生法の一部を改正する法律案」も次期国会で引き続き審議されます。その内容の一つに、地域住宅団地再生事業の創設があります。これは、居住者が高齢化するなどの課題を抱えている住宅団地について、たとえば高齢者施設や店舗を誘致しやすくしたり、コミュニティバスの導入等を図るといったしくみです。特に都市部郊外のニュータウン等において、地域資源の動向に影響を与える法案になるかもしれません。これも注目です。

野党はどのような法案を提出しているか?

野党提出法案にも目を通してみましょう。

まず、以前に当コーナーでもふれた「介護・福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」ですが、次の国会でも継続審議となっています。ポイントは、(1)処遇改善に関して、報酬上の加算ではなく公費での助成金として支給すること(対象は介護職に限っていません)。(2)報酬基準の設定に際して、従事者の職業生活の安定および離職の防止に資するように配慮しなければならないとしたことです。

次に、野党四党(立民、国民、共産、社民)が提出している「手話言語法案」と「視覚障害者等の意思疎通等のための手段の確保の促進に関する法律案(情報コミュニケーション法案)」の2つです。手話について後者の法案に含まれる部分もあり、2つの法案で1セットという形になっています。

前者は、ろう者の手話の習得機会の拡大や手話文化(手話を用いて行われる活動の文化的所産)の継承・発展を図ることも目的としたものです。そのために、国、都道府県、市町村にそれぞれ「手話計画」の策定を義務づけるなどの責務を明らかにしています。

後者は、視覚障害者だけでなく、聴覚障害、言語・音声障害など、意思疎通に支障がある人のコミュニケーション手段やその利用の確保を目指したものです。そのために、国や自治体に対して、災害時や選挙、司法手続、相談支援に際しての情報提供のあり方に配慮することを義務づけています。

上記の法案内容を見ると、与党の認知症基本法案に対する野党の手話言語・コミュニケーション法案という、共生社会をベースとした対峙の図が浮かびます。いずれも、与党は野党に、野党は与党に呼び掛けて全会一致を目指すとしています。

以上、今国会で注目しておきたい法案を列挙しました。ネットでも厚労委員会等の審議は見ることができるので、この国で何が課題になっているのかに注意を払いたいものです。

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