「従事者負担」を解析できるDBを

参議院議員選挙で、与党が改選議席の過半数を占めたことにより、10月の特定処遇改善加算の実施が予定通り行なわれることになります。この新たな処遇改善策が介護従事者の労働意欲を高め、人材不足解消の一助となるのでしょうか。新たな介護DB「CHASE」の運用と絡め、現場改革で置き去りにされている課題はないか、改めて検証します。

現場レベルでの業務改革は確かに必要だが…

厚労省は、介護サービスの質の向上と人材不足への対応を両立させるため、2018年12月から介護現場革新会議を開催し、昨年3月には基本方針を取りまとめました。同時期には、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を公表し、モデル事業などを通じて現場への普及を図っています。

この基本方針やガイドイランで、現場にかかる具体的な方策として登場するのが「各介護現場における業務の洗い出し、切り分け、そして役割分担の明確化」です。これらを現場の実情を踏まえて行なうことで、現場における「ムリ・ムダ・ムラ」の3Mを解消しつつ、業務の効率化を図ろうというわけです。

確かに、日々の煩雑な業務にただ流されるだけ──という状況を改善することは、すべての介護現場にとって必要な改革の一つでしょう。業務を「見える」化し、それを全職員が共有しつつ「少しでも現場負担を改善する」という流れが大切なことは間違いありません。

現場では解決できない外部因子はどこに?

しかし、そこには「何か」が足りません。介護現場の業務をケアマネジメントにたとえるなら、そこには(業務負担の改善という)目標に向けて、視野に入れなければならない因子(課題)があります。その因子の多くには、現場レベルでは対応しきれない外部的なものも少なくありません。

たとえば、次々と変わる制度や加算などが現場体制に与える影響、医療病床改革によって急性期から間もない状態の不安定な利用者が増えることへの影響など。また、認知症の利用者が(利用料負担の増加などによって)ぎりぎりまでサービスを使わず、BPSDがかなり悪化した状態で現場に入ってくるケースが増えることも想定されます。その時点では、家族等による虐待リスクなど、現場が解決すべき課題が複雑化しているかもしれません。

こうした因子というのは、「現場の実情」によって変わることもあるでしょうが、日本の介護状況においてはかなり普遍的で、解析できるレベルのものと思われます。となれば、「CHASE」のようにDB化したうえで、施策に反映できる部分が多いのでないでしょうか。

つまり、今の介護関連のDBに、「現場の業務負担」を以下のように専門的に解析できる分野を加えることも可能だということです。それは、(1)現場にかかっている外部因子によって、(2)従事者1人あたりの業務負担がどれだけ増えるのか。(3)それを軽減するために、国や自治体がほどこさなければならない施策は何か──という具合です。

国や自治体の「責務」こそ解析の対象に

客観的な解析のもとに、必要となる法改正(労働法制や介護従事者を保護することを目的として法律など)や処遇改善、基本報酬の上乗せを導き出すことができれば、その時々の政治的な思惑にもとづく安易な実績づくりに左右されることはありません。少なくとも、その時々の施策を「客観的な指標」と照らし合わせて、「それが現場改革にとって本当に正しいのか」を判断する指標になるからです。

具体的なケースを想定してみます。たとえば、国全体で、心身・持病の状態が不安定だったり認知症でBPSDを悪化させた利用者がどれだけ増えているか、あるいは、国が定めた加算や基準によって従事者1人あたりの実務負担がどれだけ増えているか。これらを分析しつつ、各現場の体制や従事者の経験値といった個別事情の関数と照らすわけです。

もし、現場努力では「従事者1人あたりの負担軽減」が解決できないと解析されれば、国や自治体の責任として「公費による人材補充や指導者派遣」を行ないます。もし、法人側の労務管理上の不作為や不適切な問題が明らかになったら、業務改善指導を「DB解析」にもとづいて行なうという具合です。

法制面でいえば、多くの現場に「ムリ」を強いている制度や基準があれば、国として改善しなければならない責務を負うこと。その責務を国会で制定する法律に盛り込むことが必要でしょう。これにより、介護現場の改革が「政府・行政だけが主導権を握る」という状況を改善することもできるわけです。

今やデータ解析技術は、多くの難題を乗り越えるまでに進化しています。それをなぜ、現場従事者の「働きやすさ」に活かせないのか。この点の議論が今こそ必要です。

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