第6回 ケアマネの業務範囲の捉え方

今回のテーマほど個人差が大きいものはないのではないでしょうか。ケアマネジャーが10人いれば、10通りの答えがあり、そのどれもが適切であるとも言えるのです。

   

必要性を中心に業務範囲が決まる

私の個人的な見解、即ち私の考えるケアマネジャーの業務範囲は、かなり限定的であるといえるでしょう。私の職場では毎朝スタッフミーティングをして、前日の報告や事例の検討、その日の予定などを話し合っていますが、その際に同僚と比較してみたとしても、かなり限定的だと感じています。

例えば、利用者さんの受診同行を毎回する同僚がいますが、私は自分自身が必要としているとき、または利用者さんやご家族が同席を希望されているときには同席し、他は同席しないという対応をしています。同僚は決して無駄に同席しているのではなく、必要性があって同席していますので、回数の違いだけだといえばそれまでなのですが、必要性を中心に業務範囲が決まってきます。

また、同僚と共通している考え方としては、利用者さんやご家族が自分でできることを奪ってしまわないようにしようという考えを重視していることと、そのために自分でどうすればできるようになるかを考え、その方法を提示してみようというところは共通しています。

例えば、認定更新の申請について、利用者さんやご家族が申請書を記載でき、提出することができるのであれば基本的にタッチしません。申請書が書けない、書き方がよくわからないというときには、書き方をお教えすることはありますが、提出はできるだけご自分でお願いするように働きかけをします。

同様に、各種行政文書の手続きや扱いについても、説明をしたり申請書の記載方法をお教えして、実際に記載をしたり申請をすることをできるだけご家族にできるようにしてもらっています。

他専門職との交流が関係性構築にもつながる

この行動の根底には、利用者さんやご家族はもともと「力」を持っている。援助者が関わることでその持っている力を奪い去ってはいけない。そしてもともと持っている力をさらに強化し、活用しやすくするための手助けをしようという「エンパワメント」重視の対応をすることを心がけています。したがって、一人ひとりの状態によって対応が異なり、業務の範囲もおのずから異なってくるということになります。

ですから、実際にかかわっている業務範囲の全てを「業務範囲」と定義すれば、それこそ介護保険関係の業務、一般の高齢者施策の利用に関する業務、主治医や医療機関との連携・調整業務、居宅サービスの提供者以外の支援者との連携や調整の業務、年金や税金等の仕組みに関する相談援助業務、日常生活に関係する相談援助業務などと、かなり広範囲にわたっていますが、そのすべての業務にすべての利用者が該当するということではないので、広範囲の業務になったとしても全体の業務量や負担感はさほど大きなものではありません。

また、広範囲になればなるほど、自分の専門業務からは離れていくことになるとともに、その業務を行う頻度が減ってきて、年に1回しか携わらない業務というのも少なくありません。前回やったことが今回も同じようにできるとは限らないため、関係諸機関の専門職に「教えてください」といいながら申請業務をすることがほとんどです。これが逆に関係を作ることにもつながっていて、デメリットよりもメリットの方が多くなっている気がしています。

ケアマネの役割は支援の提供者と利用者を結びつけること

私の業務範囲を決める際のもう一つの柱が、ケアマネジャーは間接援助職者であるということです。

自分が実施するのではなく、必要な支援を「提供できる人」と「利用者」を結び付けることが仕事と考えているので、自分が直接動くことは最後の最後、としています。これが正しいというわけではありません。私はこう考えているということです。ケアマネジャーの中にも「自分で動いたほうが良い」と考えている人もたくさんいます。それはそれでよいでしょう。ただたくさん背負いこめば背負いこむほど、自分の首を自分で絞めてしまうことになってしまいます。私はそうならないようにしたいと思って、間接援助最優先として動いているわけです。

ケアマネジャーの業務範囲は、法令で定められている業務範囲が最低の範囲でしょう。しかしそれだけでは生活支援が成り立たないので、そこから拡充していく必要が絶対にあります。しかし、それをどこまで広げていくかについての規定は全くありませんから、その気になれば際限なく広げることができてしまいます。

しかし人間には皆1日24時間しか与えられていません。その「限られた時間」の中でこなすことができる業務には限界があります。それを考えたうえで、自分の業務範囲を自分でコントロールすることもケアマネジャーとして重要なことですし、居宅介護支援事業所としても重要なこととなっていきます。

個人として事業所として、どこまでを業務範囲とするか、どんな基準で業務範囲を設定するのかを話し合ってみることがとても大切なことだと思っています。

◆著者プロフィール 中村雅彦
1960年生まれ。主任介護支援専門員・社会福祉士。
日本社会事業大学を卒業後、特別養護老人 ホームの生活相談員を経て、介護保険制度施行と同時にケアマネジャーに。
独立居宅の管理者兼介護支援専門員として約15年務め、現在は北アルプス医療センター あづみ病院 居宅介護支援事業所に勤務。
前長野県介護支援専門員協会会長、日本介護支援専門員協会長野県支部代議員、介護支援専門員実務研修・専門研修講師、松本短期大学非常勤講師等を歴任。
日本介護支援専門員協会には幾度となく現場目線からの提言をしている。
優しい眼差しと熱い口調でケアマネの養成に勤めている。趣味はスポーツと読書。

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