21年介護保険改正を読み解く(3)~認知症施策にかかる課題~

2021年度に施行予定の介護保険制度の見直しを展望するシリーズ。今回は、認知症施策の総合的な推進について取り上げます。今年6月に政府が策定した認知症施策大綱の内容を、介護保険制度上での具体的な施策へとどのように反映させるのかがテーマとなります。

6月の認知症施策大綱のKPI等にまず着目

認知症施策にかかる近年の大まかな流れとしては、2015年の新オレンジプラン策定に始まり、2017年には改正介護保険法改正において「新オレンジプランに基づいた認知症施策の推進」が明確に打ち出されました。ここに、今年6月の認知症施策大綱の取りまとめが加わり、大綱が打ち出す5つの柱(※)に沿った施策推進が進められることになります。

介護保険部会で厚労省が打ち出した論点は、上記のような動きを踏まえたうえで「介護保険制度において、認知症施策大綱を推進するための方策をどのように考えるか」というものです。「大綱ありき」を前面に押し出したシンプルな論点ですが、いずれにしても大綱に示された「KPI(目標)」や、添付されている「柱ごとの認知症施策集」や「工程表」をチェックすることが必要となります。

まずは、柱ごとのKPIの中から、介護保険制度、特に介護サービス現場にかかわってくると思われるものをピックアップしてみましょう。それにより、制度の行方がどうなるのかというビジョンが少しずつ浮かぶはずです。

※5つの柱…(1)普及啓発・本人発信支援、(2)予防、(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、(5)研究開発・産業促進・国際展開

BPSD悪化防止のエビデンスは蓄積できるか

5つの柱のうち、介護現場に直接影響を与えると思われるのが、(1)~(3)でしょう。

まず(1)に関して介護現場に関係しそうなものとしては、「医療・介護従事者向けの認知症に関する各種研修において、『意思決定支援に関するプログラム』導入率100%」があげられます。具体的には、昨年6月に厚労省が策定した「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン」の内容を、専門職向けの研修(介護職なら認知症介護実践者研修など、医師・看護師なら認知症対応力向上研修)に盛り込むことが想定されます。

(2)に関しては、自立支援に資する科学的介護が絡んできます。具体的には、介護保険総合DBに加え、2020年から本格的なデータ収集が始まるCHASEをもって「認知症予防等の効果」が裏付けられたサービスを国民に提示するというものです。また、認知機能の抑制に関する機器・サービスの評価指標・手法の策定もかかげられています。ちなみに、(2)に関して、今回の大綱では「BPSDの予防・対応」も「予防」に含めるとしています。

要するに、利用者の認知機能低下やBPSD悪化の防止に関して、以下のような流れが予想されるわけです。それは、CHASEで収集されたデータをもとに、2024年度までに「認知症ケアの手法」にかかる評価指標を策定するというものです。過去のニュース解説で、CHASEへのデータ提供に報酬上のインセンティブを働かせる可能性にふれました。その中でも、GHや小規模多機能型などのサービスにおいて、特に「BPSDの悪化防止」にかかるデータ収集が強化されるかもしれません。

介護現場へのフォローアップも大きな課題

上記のビジョンをさらに推し進めたのが、(3)における「BPSD予防に関するガイドラインや治療指針の作成・周知」、「認知症対応プログラムの開発」、「認知症リハビリの開発・体系化」です。ここで注意したいのは、非薬物的介入にかかるBPSDの改善を進めたうえで、介護現場における対応やリハビリの手法につなげるという流れが垣間見えることです。

つまり、認知症初期集中支援チームの稼働を進めつつ(KPIでは訪問実人数を年間4万件と設定)、BPSDを改善したうえで介護現場等につなげる(KPIでは医療・介護サービスにつながる割合が65%)という流れを、制度的に下支えすることが考えられるわけです。

そのうえで、介護現場に対しては必要な介護人材の確保として、「柱ごとの施策」に以下のような取組みが示されています。それが、処遇改善や人材育成への支援、業務プロセス・文書作成の見直し・ICT・介護ロボット導入といった具合です。このあたりの施策は以前から政府が打ち出しているものですが、認知症対応というテーマに絡めた施策上の上積みがあるのかどうかがポイントとなりそうです。

問題は、BPSDの改善に資するケア手法が開発されたとして、それを介護現場でどのように実績するかという流れでしょう。たとえば、初期集中支援チームによるBPSD改善が行われたとして、そこから介護現場へのバトンタッチのしくみをどうするのか、介護現場に向けたフォローアップはきちんとなされるのかといった点がポイントとなってきます。

また、何度も述べていますが、認知症介護という部分では当事者団体からも上がっている「要介護認定にかかる認知症の正確な判定」というテーマは避けられません。こうした点も含めて、現場視点に密着した改革案が示されるのかどうか。今後の介護保険部会での議論において、注目したいポイントといえます。

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