【解説】認知症対策の新大綱、どんな具体策が盛り込まれたか? 後編

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《 6月18日の関係閣僚会議(画像出典:首相官邸HP)》

政府が6月18日の関係閣僚会議で決めた「認知症施策推進大綱」− 。その基本理念として「共生」と「予防」が掲げられたが、いったいどんな具体策が盛り込まれているのか?

具体策は5本柱。以下のように分けられている。

(1)普及啓発・本人発信支援
(2)予防
(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
(5)研究開発・産業促進・国際展開

《資料》認知症施策推進大綱について

前回のまとめ記事では、このうちとを解説した。今回は以降を詳しくみていく。

(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援

この章には認知症の当事者を地域で支えていくための具体策が並ぶ。これらは大きく5つの要素で構成されている。

1. 早期発見・早期対応、医療体制の整備

地域の関係機関どうしが日頃から有機的に連携することが、認知症の早期発見・早期対応につながっていく − 。こうした認識のもと、各プレイヤーの機能を強化していく方針が打ち出された。

入り口の相談窓口として重要な役割を果たすのはやはり地域包括支援センターだ。サービスの質をさらに向上させるほか、スーパーマーケットや金融機関といった民間セクターとの協力も推進していくとされた。

全ての市町村に置かれている「初期集中支援チーム」については、「適切な医療・介護サービスなどへつなぐ取り組みを強化する」と書かれている。先進的な好事例を横展開しつつ、その対応力を改めて底上げする方策を検討していく計画が示された。

認知症疾患医療センターには、高い専門性を活かして司令塔の役割を果たすことが期待されている。かかりつけ医や包括と連携するのはもちろん、診断後のフォローやBPSDの予防、増悪期の助言などにも一段と力を入れることとされた。

2. 医療従事者等の認知症対応力向上の促進

かかりつけ医や歯科医師、薬剤師、看護師などの対応力を高める研修を推進していく考えが示されている。急性期病院をはじめ、入院、外来、訪問などを通じて当事者と関わる機会の多い看護師を「鍵」と位置付け、必要な知識・技能の習得を関係団体などと支援していくこととされた。

3. 介護サービス基盤整備・介護人材確保・介護従事者の認知症対応力向上の促進

各地域のニーズを踏まえた効率的な介護サービスの整備に引き続き取り組む構えをみせている。

ロボットやセンサー、ICTの活用、業務の仕分け・役割分担の促進、元気高齢者の受け入れ、業界のイメージ改善などに注力するという。介護職員の処遇改善にも努めるとしたが、もう一歩踏み込んだ具体的な施策には言及していない。

認知症ケアの拠点としてグループホームをあげ、その機能を広く地域へ展開していく構想も掲げられた。eラーニングを有効に活用することなどにより、介護職員が研修を受講しやすい環境を整える考えも盛り込まれている。

4. 医療・介護の手法の普及・開発

BPSDの予防やリスクの低減、ケアの標準化に向けた研究を推進していく計画が示された。やむを得ず本人の行動の制限が必要となるケースであっても、それが適切に行われるように徹底していくと説明している。

また、生活機能の改善を目的とした認知症のリハビリテーションについて、事例の収集や技法の開発などに取り組むとも記載された。

5. 介護者の負担軽減の推進

通所介護や訪問看護、ショートステイ、小規模多機能などの展開に引き続き力を入れるとした。当事者が地域の関係者や専門家と情報を共有できるよう、認知症カフェなどの機会を積極的に活かしていく考えを示している。

また、介護サービス事業所における“家族教室”や家族どうしのピア活動について、好事例を収集していくと記載。介護休業をはじめとする支援制度の周知・活用促進にも努めるとした。

医療・ケア・介護サービス・介護者への支援 主なKPI

○ 初期集中支援チームにおける訪問実人数:全国で年間40000件。医療・介護サービスにつながった者の割合:65%
○ 認知症疾患医療センターの設置数:全国500ヵ所
○ 市町村における認知症に関する相談窓口の掲載:100%
○ 市町村における「認知症ケアパス」作成率:100%
○ 認知症介護基礎研修:介護に関わる全ての者が受講
○ 患者・入所者の状態に応じた認知症リハビリテーションの開発・体系化

(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援

認知症になっても住み慣れた地域で普通に暮らしていける環境が整っていること、生活の妨げとなるあらゆる障壁が排除されていること − 。それが認知症バリアフリーだ。

ここではそうした目指す理念を具現化し、本人の社会参加を後押しする具体策が列挙されている。

例えば移動手段。一定の規模を有する公共交通機関に対し、認知症の人への対応力を高める計画の作成、取り組み状況の報告・公表を義務付けると明記。安全機能を備えた車を前提とした運転免許の創設を検討していきつつ、自動運転技術の社会実装を加速させる方針も示された。

認知症の人が買い物しやすい環境の整備にも力を入れる構えだ。新たなテクノロジを活かした決済方法の導入を支援するほか、当事者の意見を踏まえて開発された商品・サービスを登録する仕組みを作ると説明。このムーブメントに共感して積極的にコミットする企業・団体を認証する制度も検討していくとした。

このほか、地域の見守りネットワークの強化に引き続き力を入れると記載。消費者トラブルや虐待を未然に防ぐ視点も重視する構えをみせた。行方不明者が早期に見つかるよう、ICTなどを活用した効率的な捜索システムの一層の普及も後押ししていくという。

若年性認知症については、就労・社会参加のネットワーク作りや専門相談窓口の拡充、電話相談の運営などを推進するとした。また、コーディネーターの効果的な配置やその資質の向上に向けた検討を行う考えも示している。

認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援 主なKPI

○ 全国各地での自動運転移動サービスの実現
○ 市町村の圏域を越えても対応できる見守りネットワークを構築
○ 本人の意見を踏まえた商品・サービスの登録件数:登録制度の検討結果を踏まえて設定
○ 地域の実情に応じた食料品アクセス環境の改善:対策を必要とする地域における取り組みの実施割合
○ 人口5万人以上の全ての市町において、消費者安全確保地域協議会の設置
○ 全国若年性認知症支援センターがコーディネーターから受ける相談件数の増加

(5)研究開発・産業促進・国際展開

認知症は未だ発症や進行の仕組みの解明が不十分であり、根本的治療薬や予防法は十分に確立されていない − 。

これが基本認識だ。様々な病態やステージを対象に研究開発を進め、早期発見・早期対応や診断法の確立、予防法の開発、ケア技術の向上、リハビリテーションモデルの構築、それらの国際展開などにつなげたい考えを示した。「認知症は経過の長い疾患。成果を得るには長期的な計画が必要」として、安定的に研究を継続させる仕組みを作る方針も掲げた。

このほか、当事者の生活の質や家族の負担などに焦点を当てた研究にも取り組む姿勢をみせている。

研究開発・産業促進・国際展開 主なKPI
○ 認知症のバイオマーカーの開発・確立:POC取得3件以上
○ 認知機能低下抑制のための技術・サービス・機器などの評価指標の確立
○ 日本発の認知症の疾患修飾薬候補の治験開始
○ 認知症の予防・治療法開発に資するデータベースの構築と実用化
○ 薬剤治験に即刻対応できるコホートを構築

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