小規模事業所は「見捨てられる」のか

医療福祉機構が、2017年度の「通所介護事業所の経営状況」についてのリポートを公表しています。それによれば、地域密着型(定員18人以下)の事業所において、赤字割合が45.5%となっています。依然として小規模事業所の経営状況の厳しさが現れた数字です。

より深刻なのは「人件費の引き下げ」傾向

今調査の対象は、医療福祉機構による貸付を受けている事業所です。調査では、そこから提出される財務諸表データをもとに集計が行われています。融資に際しては審査があることから、全事業所の実態よりも経営の健全性が比較的高い可能性にあるでしょう。その中で赤字割合が45%を超えるということは、数字以上の深刻さがうかがえます。

調査は2017年度なので、介護報酬上の影響としては2015年度改定が該当します。その時の改定では、(当時)小規模型だった事業所の基本報酬が9~10%ほど引き下げられ、その影響が尾を引いている時期といえます。

ちなみに、前年度(2016年度)の赤字割合はさらに高い50.6%で、その数字と比べれば「やや落ち着いて」はいます。しかし、見方を変えれば、前年度の調査対象だった事業所の淘汰が進んだといった仮説も浮かびます。

気になるのは、地域密着型事業所の赤字割合が対前年比でやや低下した一方で、人件費率や従事者1人あたり人件費も減少していることです。特に従事者1人あたり人件費は、320万4000円から284万6000円へと35万8000円もダウンしています。人材不足により現場の人件費増の圧力は高まっているにもかかわらず、これだけダウンしているというのは、尋常ではありません。地域密着型通所介護の経営体力は、「人件費の引き下げ」という介護事業者にとっては「禁じ手」に着手せざるを得ないレベルに陥っているといえます。

いよいよ「経営の大規模化・協働化」へ!?

さて、こうした小規模事業所の厳しさが際立ってくると、頭をよぎるのが「経営の大規模化・協働化を通じた生産性の向上」という改革テーマです。6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針2019)」でも、同テーマは示され、同改革等により「2040年までに単位時間サービス提供量を5%以上向上させる」としています。

想定されるのは、先のように赤字割合が高まっている地域密着型通所介護などに対し、大規模法人による統合・再編や複数法人による協働化をうながすしくみを導入することでしょう。財務省も、4月に「本部機能を独立・法人化し、研修や採用活動を共同で実施する」といった事例を示しています。こうしたしくみへの誘導に、どのようなインセンティブをほどこすのかについて、これから厚労省の介護保険部会でも提示される可能性があります。

ただし、大規模化を図った場合、地域によっては過疎地などでのサテライト展開も必要になります。ここに「経営効率」という視点が入ってきたとき、そうしたサテライト事業所の継続が果たして可能なのでしょうか。

ちなみに、厚労省は介護保険部会で、地域において「高齢者」のみならず障がい者支援や子育て支援まで含めた総合拠点(共生型サービスをさらに発展させたもの)という事例を示しています。こうした多様な福祉ニーズの統合を図ることで、地域資源の維持を図るという方策も、「大規模化・協働化」と並行してクローズアップされるかもしれません。

当面は「淘汰もやむなし」に舵が切られた?

ところで、一つ気になることがあります。この「経営の大規模化・協同化」については、骨太の方針2019ではふれられている一方、財務省が同じく6月に示した「令和時代の財政のあり方に関する建議」内では除かれていることです。4月時点の財政制度等審議会の「社会保障」にかかる資料では示されているのですが、給付効率に関しては「価格競争(報酬基準額よりも低い費用でのサービス提供をうながす)」の話と入れ替わっています。

考えられるのは、経営の大規模化・協働化に向けた積極的な手立ては「後回し」にされることです。上記で述べたように、大規模化・協働化には課題は多いものの、小規模事業所の経営悪化を放置するわけにはいきません。しかし、「淘汰されるものはなすがままに」としたうえで、国としては「民間側の自主的な再編が一定程度進むのを待つ」という姿勢をとろうとしている意図も浮かんできます。

仮にそうだとすれば、2021年度の介護報酬改定は、(淘汰も致し方なしとして)再び小規模事業所に厳しい改定案を持ち出してくる可能性があります。結局、しわ寄せを被るのは、費用対効果の上がりにくい地域で「それでも頑張っている事業者と職員」、そして何より「その利用者」です。この問題は、これから先さらにヒートアップしていきそうです。

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