21年介護保険改正を読み解くその2~「地域特性」を考慮した事業大再編も?~

当ニュース解説では、介護保険部会での論点をもとに、制度見直し(法改正は2020年を想定)の方向性を探っています。今回は、見直し課題の一つである「地域包括ケアシステムの推進」について取り上げましょう。

都市部とそれ以外の地域で異なる「地域性」

まずは、5月23日開催の介護保険部会での提示された「地域包括ケアシステムの推進」にかかる課題と論点に着目します。見すえているのは、団塊世代が全員75歳以上となる2025年に至るまでの高齢化の状況です。

見通しでは、75歳以上の人口の伸びが顕著になるのは当然として、75~84歳と85歳以上で微妙に異なる傾向が見られます。具体的には、ほとんどの都道府県で75~84歳の増加数が85歳以上の増加数を上回っていますが、特に東京圏や愛知圏、各地方の中心地域でこの傾向が顕著となっています。

さまざまな要因が考えられるわけですが、85歳以上になると施設サービス利用の割合が増えるという点から、施設の用地確保が難しい都市部からローカル立地の施設への入所といった流れも想定されます。注意したいのは、この高齢者人口やサービスニーズに関する「地域差」を大きな課題としている点です。

ちなみに、論点としては、「地域差を踏まえたサービス整備の方策」がかかげられています。具体的には、「都市部における土地利用等の制約もある中でのサービスの受け皿整備をどう考えるか」ということです。

「空きスペース活用」と「資源の集約化」

都市部とそれ以外の地域での「地域差・地域の特性」に応じたサービス基盤の整備──この論点提示は何を意味するのでしょうか。

ちなみに、部会資料では、地域特性に応じた以下のようなケースが紹介されています。たとえば、都市部において空き教室や旧校舎を活用したり、高層ビルの一部に併設する形で、介護施設や診療所を設けたり、在宅サービスや家事支援・食事サービスが提供されているといったスタイル。要するに、「土地利用等の制約」という課題への対応例です。

一方、85歳以上の人口比率が高い(つまり、重篤化しやすい層が多い)市町村では、以下のようなケースが紹介されています。それは、自治体とUR都市機構、医師会や大学等が連携し、「団地内」に診療所、訪問看護ステーション、薬局、地域包括支援センター等を誘致し、地域内の医療福祉拠点化を進めているというもの。重度化リスクが高い人口増の中で、生活圏に近い範囲内に医療・福祉資源を集中させるという取組みの一つといえます。

こうした「地域差・地域特性」を考慮した事例を取り上げるということは、これを制度上に反映させることが視野に入っているという見方ができます。つまり、「都市部」では、土地利用の制約をカバーできる「空きスペースの活用」を。高齢者が著しい「市町村」では、「資源の集約化」を図ろうというわけです。

医療系主導の事業再編が主テーマになる!?

具体的な制度への反映となれば、介護保険事業計画に「地域特性」を考慮した「空きスペース活用や資源の集約化」などのビジョンを反映させるといった法改正が考えられるでしょう。また、地域医療・介護総合確保基金を活用して、上記のような展開への補助金などを創設することも想定されます。

地域の特性に応じたサービス基盤の整備は、それが本当に地域ニーズに合致したものであればメリットは大きいでしょう。しかし、ここで注意したいことがあります。それは、先の補助金のみならず、2021年度の改定にともなう報酬上の誘導策などが絡んだ場合に、大きな事業再編が起こる可能性です。

たとえば、2018年度改定で、看護小規模多機能型(以下、看多機)にサテライト型事業所が創設されました。こうした「新形態の創設」という動きは、過去の報酬改定例などを見ても、その後に拡大されるケースが目立ちます。つまり、都市部の「空きスペース」を活用し、「重度者の受け皿」機能を果たす資源として、この看多機のサテライト型などの拡充を図るという流れも考えられるわけです。

また、市町村における「資源の集約化」については、やはり「重度者の受け皿」というビジョンが伴う中で、診療所・訪問看護・薬局といった医療系を中心とした新拠点が想定されます(先の事例は、まさにこの医療系中心です)。いずれにしても、医療・看護系を主軸とした事業再編が色濃くなりそうです。

ここに財務省が提言する「軽度者向けサービスの地域支援事業への移行」が絡んだとき、介護保険事業の構図は大きく変わりかねません。特に、既存の訪問・通所介護がどうなるのかといった議論の行方に注意が必要です。

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