文書にかかる負担軽減。重要な視点は?

2021年度の制度見直しに向けて、社会保障審議会・介護保険部会での議論が進んでいます。介護分野の人材不足などの課題が山積する中、5月23日の部会で厚労省が示したのが、「介護分野の文書にかかる負担軽減に関するWG」の設置です。昨今、政管通じて大きなテーマとなってきた「事務負担軽減」の流れですが、真の課題解決は期待できるのでしょうか。

主たる共通化・簡素化の対象項目は3つ

新たなWGで「共通化・簡素化」を目指している文書の種類は、以下の3つです。(1)指定申請関連文書(人員・設備基準に該当することを確認する文書等)、(2)報酬請求関連文書(加算取得の要件に該当することを確認する文書等)、(3)指導・監査関連文書(指導・監査にあたり提出を求められる文書)。また、これ以外でも、「地域によって取扱いに顕著な差があり、事業者および指定権者・保険者の業務負担への影響が一定程度見込まれる分野」についても検討の対象にするとしています。

ちなみに、(1)~(3)については、すでにさまざまな施策が講じられたり、予定されているものがあります。改めて整理してみましょう。

(1)については、昨年10月の改正省令の施行により、簡素化に向けた様式例等の変更が行われました。(3)については、5月30日に「介護保険施設・事業所等に対する実地指導の標準化・標準化等の運営指針」が示されています。(2)についても、自治体・事業者へのアンケート・ヒアリングを踏まえた削減文書・項目の洗い出しが行われています。

これで、本当に現場の負担軽減になるのか?

さて、上記のような対応策、およびWGにおける検討課題を見て、「本当にこれで私たちの負担軽減になるの?」と思う人がいるかもしれません。確かに、(2)(3)は現場の日常的な記録業務が関連してくることもあり、(特に中小規模事業所などでは)(2)について直接的な書類作成も現場が担うこともあるでしょう。しかし、たとえば(2)などは、おおもとの加算が整理されない限り、どこまで効果が上がるのかが推し量りにくいのが実情です。

それでも、「やらない(削減しない)よりはまし」という見方もあるでしょう。その場合でも、前提となるのは、「その書類作成が、現場にとってどのような意味があるのか」がきちんと整理されていることです。

現場における多様な記録を例にとると、「チーム内での情報共有を図るため」という目的のものもあります。日勤や夜勤へなどの情報共有でいえば、利用者の日中の状況によって夜間のリスクが予測できる場合があります。つまり、情報共有がきちんと行われていれば、何かあった場合の予防的対処や早期対処も可能となる確率が高まるわけです。逆に言えば、きちんとした記録がほどこされていないと、結果としてリスクが増大から現場の負担は「増大する」こともありえます。

また、介護事故による訴訟・裁判などが生じた場合、情報共有から対処に至る流れが記録として残っているかどうかで、職員の過失責任が左右されることもあります。もちろん、ただ「記録がある」というだけではダメです。中途半端な記録で情報共有に「穴」が生じると、情報を伝える側・受け取る側双方の職員の過失が問われることになりかねません。

「国の施策評価」という観点も必要に

いずれにしても、大切なのは「その書類作成が必要か否か」について、「現場の利用者や職員を守るものとなっているかどうか」という視点で検討を進めることでしょう。それがないと、結局は形だけの「事務負担軽減」となってしまい、「現場としてはピンとこない」で終わってしまうことになりかねません。

もう一つ懸念されるのは、「これだけの事務負担軽減をしたのだから、後は現場の努力次第」という流れが生じることです。このあたりは、国が進めようとしているICTやセンサー、介護ロボットの導入策にも言えることでしょう。「国が敷いたレールにまず乗りましょう」というボールだけが投げられて、現場はそれを受け止めるだけ。つまり、施策側と現場のキャッチボールになっていないわけです。

これからWGがスタートするわけですが、まずは「現場リスクがもっとも高くなるケース」を整理することから始めてもらいたいものです。たとえば、事故リスクが増大しやすいパターン、不測の事態よって職員の残業等が増えやすいパターンなど。そこで、どのような情報共有がなされていれば、現場の負担軽減にもっとも資するのか。この視点で、今ある記録等の様式を一つひとつ見直していくことが必要です。場合によっては、加算取得のためだけの書類作成になっているという本末転倒の状況が浮かんでくるかもしれません。

となれば、このWG自体、国の施策評価のためのPDCAサイクルの一環という位置づけにもなるはず。そこまでできてこそ、真に働きやすい現場づくりにつながるはずです。

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