これで分かる! 認知症基本法案 その柱となる重点施策とは?

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自民党と公明党のすり合わせが順調に進み、議員立法の「認知症基本法案」が今国会へ提出されることになった。早ければ年内にも成立する可能性がある。

政府が今月中に閣議決定する新たな「大綱」も、この基本法案の下に位置付けられることになる。いったいどんな中身になっているのか? 今月4日、自民党の厚生労働部会でその全容が初めて明らかにされた。

前回のまとめでは、その基本理念や関係者の責務、基本計画の策定ルールなどについて、与党の動きが加速した背景とともに整理した。

2回目の今回は、国や自治体が特に重視すべき取り組みを列挙した「基本的施策」をつぶさに取り上げる。

共生や予防、研究開発が柱

基本法案に位置付けられた「基本的施策」は、以下の7つの大きな柱で構成されている。

1. 教育の推進
2. 生活におけるバリアフリー化の推進
3. 社会参加の機会の確保
4. 認知症の予防
5. 医療・福祉サービスの提供体制の整備
6. 相談体制の整備
7. 研究開発の推進

「認知症バリアフリー」の考え方が取り入れられたことが1つの特徴。基本法案は国や自治体に対し、地域での安心・安全な暮らしを妨げる障壁を取り除く手を打つよう求める内容となっている。

「共生」とともに「予防」を重視していること、必要な相談体制の整備を要請していることも大事な要素だ。医療・福祉サービスの提供体制については、介護人材の確保や資質の向上にも注力すべきとしている。

以下、「基本的施策」の柱ごとに具体的な中身をみていく。

1. 教育の推進

ポイント
学校教育・社会教育で認知症を学んでもらうほか、広く国民に理解を深めてもらうための運動なども展開するよう求めている。

《条文要約:教育の推進》
国と自治体は、国民が認知症に関する知識や認知症の人に関する理解を深めることができるよう、学校教育・社会教育における認知症に関する教育の推進、認知症の人に関する理解を深めるための運動の展開、その他の必要な施策を講じるものとする。

2. 生活におけるバリアフリー化の推進

ポイント
交通手段やその安全の確保、成年後見制度の利用の促進などに加えて、認知症の人が利用しやすい製品・サービスの普及にも取り組むよう求めている。

《条文要約:生活におけるバリアフリー化の推進》

○ 国と自治体は、認知症の人が安心して暮らすことのできる安全な地域づくりの推進を図るため、移動のための交通手段の確保、交通の安全の確保、地域で認知症の人を見守る体制の整備、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、認知症の人の権利利益の保護を図るため、成年後見制度の利用の促進、消費生活における被害を防止するための啓発、認知症の人がその権利を円滑に行使することができるようにするための関係職員に対する研修、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、認知症の人の生活を支援するため、認知症の人にとって利用しやすい製品やサービスの開発、普及の促進、民間における自主的な取り組みの促進、その他の必要な施策を講じるものとする。

3. 社会参加の機会の確保

ポイント
本人の意欲や能力に応じた仕事の継続などが重要と指摘。その文脈で事業者への啓発にも力を入れるよう求めている。

《条文要約:社会参加の機会の確保》

○ 国と自治体は、認知症の人が生きがいを持って生活を営むことができるよう、認知症の人の社会参加の機会の確保、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、前項の施策を講じるにあたっては、若年性認知症の人、その他の認知症の人の意欲や能力に応じた雇用の継続、円滑な就職などが重要であることに鑑み、事業主に対する就労に関する啓発、知識の普及、その他の必要な施策を講じるものとする。

4. 認知症の予防

ポイント
予防に関する啓発や知識の普及、地域活動の推進だけでなく、関係機関の連携による早期発見・早期対応にも注力するよう求めている。

《条文要約:認知症の予防》

○ 国と自治体は、認知症と軽度認知障害の予防の推進のため、予防に関する啓発や知識の普及、予防に資すると考えられる地域活動の推進、予防に係る情報の収集、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、認知症と軽度認知障害の早期発見、早期対応を推進するため、地域包括支援センター、医療機関、民間団体などの連携協力体制の整備、その他の必要な施策を講じるものとする。

5. 医療・福祉サービスの提供体制の整備

ポイント
住んでいる地域にかかわらず皆が等しく医療を受けられる環境の整備や地域包括ケアシステムの構築を求めている。加えて、介護人材の確保や資質の向上にも取り組むよう要請している。

《条文要約:医療・福祉サービスの提供体制の整備》

○ 国と自治体は、認知症の人がその居住する地域にかかわらず等しく状態に応じた適切な医療を受けることができるよう、認知症に係る専門的な医療の提供などを行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、認知症の人に対し適時に、かつ、適切な保健医療サービス、福祉サービスを総合的に提供するため、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、保健医療、福祉の相互の有機的な連携の確保、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国と自治体は、認知症の人の状態に応じた保健医療サービス、福祉サービスが提供されるよう、医療・介護従事者に対する研修の実施、医療・介護の人材確保、養成、資質の向上、その他の必要な施策を講じるものとする。

6. 相談体制の整備

ポイント
関係機関の有機的な連携のもとに相談体制を作るよう求めている。本人どうし、家族どうしで交流する活動を支援したり、家族などへ学習機会を提供したりすることも要請している。

《条文要約:相談体制の整備》

○ 国と自治体は、関係機関相互の有機的連携の下に、認知症の人や家族などからの各種の相談に応じるために必要な体制の整備を図るものとする。

○ 国と自治体は、認知症の人どうし、家族どうしが支え合うために交流する活動に対する支援を行うものとする。

○ 国と自治体は、家族などの負担の軽減を図るため、前項に規定するもののほか、認知症の人の状態に応じた対処についての学習機会の提供、その他の必要な施策を講じるものとする。

7. 研究開発の推進

ポイント
予防・診断・治療の方法や介護のあり方について研究開発を進め、得られた成果を活用していくよう求めている。全国規模の追跡調査や治験の環境整備などにも取り組むよう要請している。

《条文要約:研究開発の推進》

○ 国と自治体は、認知症の本態解明、認知症や軽度認知障害の予防・診断・治療に関する方法の開発、その他の認知症の予防に資する事項、状態に応じたリハビリテーションや介護方法の開発、生活の質の維持向上などに資する基礎研究・臨床研究の促進、その成果の活用、その他の必要な施策を講じるものとする。

○ 国は、前項の施策を講ずるにあたっては、官民の連携を図るとともに、全国的な規模の追跡調査の実施の推進、治験の迅速かつ容易な実施のための環境の整備、その他の研究開発の基盤を構築するために必要な施策を講じるものとする。

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