第4回 外国人介護士とケアマネ

厚生労働省が昨年5月、「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」において、2025年度末には約245万人、現在の状況から約55万人の介護職員の人材が必要であるというデータを公表しました。いっぽう、介護現場では深刻な従事者不足が続いており、状況は悪化していると言わざるを得ない実態があります。そのため政府は外国人介護人材を活用しようと本格的に施策を開始しています。しかし、介護現場に外国人が入ってきて仕事をするということは、決して容易なことではないでしょう。仕事をしていくためには解決しなければいけない問題や課題が山積しています。

日本特有の難解なコミュニケーションを成り立たせるには

では具体的にどんな課題が考えられるのか。その最たるものとして「コミュニケーション」があげられるでしょう。介護の現場ではコミュニケーションが極めて重要な意味を持ちます。コミュニケーションのない介護は存在できません。さらに日本語という言語は世界的にみてかなり難解な言語だといわれています。これは書き言葉としての難解さだけでなく、話し言葉としても難解であるといわれています。

さらに「一を聞いて十を知る」というように、「言外に様々な意図を込めるコミュニケーション」が日本語の特徴であるとも言われています。つまり「語られた言葉」を理解しただけでは本来の意図が伝わらない、コミュニケーションが成り立たないという結果になってしまう危険性が高まります。

この難解なコミュニケーションを介護現場でどう対処していくのかが、外国人人材が介護現場に定着し、必要な介護を提供できる「マンパワー」として機能していくかを左右するといっても過言ではないと思います。

マニュアル化できるサポートとできないサポート

というのは、介護は「身体的なサポート」と「心理的なサポート」に大別されます。身体的なサポートには「technique」が必要になります。心理的サポートには「art」が不可欠になります。前者はいわば「マニュアル化できる技術」です。それに対して後者は「マニュアル化することが難しい技術」です。「コツ」とか「匠の技」のような技術です。

例えば訪問介護の支援において、生活援助では利用者さんの求めている生活支援をマニュアル化することは可能です。どのように調理をして、ということが文書化できますし、メニューやレシピとして表現することもできます。また、身体介護においてもADL等を中心とした動作介助においては、その具体的な方法論をマニュアル化することは可能です。

しかし、介護に関する相談支援、不安の受け止めや軽減というような支援は、その対応方法を具体的にマニュアル化することは不可能です。なぜかといえば、そこには支援者の個人的な特性が大きく影響し、支援者個人の「持っているもの」によって対応方法が異なってくるからです。そのためAさんには簡単な心理的サポートも、Bさんにはとてつもなく難しいサポートになるということは現場ではよく見られているはずです。

どんな支援を求めるのかの見極めを

外国人介護従事者にどのような介護を担ってもらうか。どのような介護なら担当することができるか。この見極めが重要になってくると思います。例えば居宅サービスであれば、担当者会議などでサービス事業者に対して「こういう支援を、このように展開してほしい」という依頼をするとともに、そのような支援を事業者が着実に展開していくことができるのかを今以上に確認する必要が出てくるのではないでしょうか。いわゆる、外国人介護従事者が多い事業所に心理的サポートを中心とした支援の提供を求めても大丈夫なのかの確認作業です。この見極めと確認が今後の支援のポイントとなっていくのではないかと思います。

ただこれは「両刃の剣」で、下手をすると外国人介護従事者には「誰にでもできるような支援」、コミュニケーションをさほど必要としないような支援「だけ」が求められていくような状況を作り出してしまう要因になる危険性があります。これだけは避けなければいけません。あくまでも力量に応じた役割分担を可能とする支援の提供体制を作っていくことが必要になってくると思います。そしてこれが、外国人介護従事者が現場でできるだけ長く仕事を続けていくための要因にもなっていくでしょう。

せっかく様々な困難を超えて日本に来てくれた外国人介護従事者が、少しでも長く、やりがいをもって仕事ができるような環境を整えていくことも、今後の課題となっていくでしょう。  

◆著者プロフィール 中村雅彦
1960年生まれ。主任介護支援専門員・社会福祉士。
日本社会事業大学を卒業後、特別養護老人 ホームの生活相談員を経て、介護保険制度施行と同時にケアマネジャーに。
独立居宅の管理者兼介護支援専門員として約15年務め、現在は北アルプス医療センター あづみ病院 居宅介護支援事業所に勤務。
前長野県介護支援専門員協会会長、日本介護支援専門員協会長野県支部代議員、介護支援専門員実務研修・専門研修講師、松本短期大学非常勤講師等を歴任。
日本介護支援専門員協会には幾度となく現場目線からの提言をしている。
優しい眼差しと熱い口調でケアマネの養成に勤めている。趣味はスポーツと読書。

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