総合事業停滞は、国政調査レベルに!?

2018年10月に実施された「介護予防・日常生活支援総合事業」等の調査結果が公表されました。2015年度に事業がスタートしてから3年半が経過した時点での調査結果となりますが、介護予防・生活支援サービスの提供体制(特に「多様なサービス」)が思うように整備されていない状況が浮かび上がっています。

施行から3年半で目立ってきた滞りの状況

調査自体は10月ですが、介護予防・生活支援サービスの事業所数は6月時点の状況となっています。本調査では、2017年6月時点との比較が上がっていますが、それ以前(2016年)の状況と比較した場合はどうなるのでしょうか。残念ながら、2016年9月に公表されたデータでは、それまでに総合事業に移行した78自治体のみの対象となるので、多様なサービスの出現状況の単純比較はできません。

ただし、その78自治体にかかる介護予防・生活支援サービス全体に対する「多様なサービス(従前相当サービス以外)」の比率はわかります。それによれば、訪問型サービスで30.0%、通所型サービスで27.5%でした。

これに対し、9割以上の自治体から回答を得た17年度(94.5%)、18年度(96.8%)の調査では、訪問型で25.9%(17年度)→30.5%(18年度)、通所型で20.3%(17年度)→24.9%(18年度)という具合です。訪問型では先進自治体の割合に何とか追いついていますが、通所型では依然として下回っています。

要するに、施行から3年半たった今でも、「多様なサービス」の整備状況については、先進自治体の初期状況にようやく追いつけるかどうかのレベルといえます。これからさらに従前相当サービスが減っていく流れは(現状を見る限り)止められそうもなく、一方で高齢者数は今後も増えるとして、地域資源が圧倒的に足りなくなる段階に入っているのかもしれません。このままいけば、国会で国政調査権などを行使する必要性もありそうです。

実施効果の点検・評価さえも進まない中で

注意すべきは、事業者数・利用者数といった数字上の問題にとどまらないことです。仮に「資源が足らない」状況が広がっているとすれば、自治体によっては「サービスの立ち上げ」ありきで動こうとする可能性もあります。となれば、当然ながら「サービスの質」、つまり、「要介護にならないようにするための自立支援・重度化防止に足る質」を確保しているかどうかが問題となってきます。

実は、今回の調査では、上記の課題が深刻化している状況も浮かんでいます。それが、総合事業の評価状況です。たとえば、回答自治体の中で「総合事業の実施効果の点検・評価」を行なっているのは、30.4%にすぎません。「総合事業にかかる費用対効果による事業評価」になると、わずか9.6%となります。

ちなみに、今回の調査は2018年10月実施なので、第7期の介護保険事業計画はスタートしています。つまり、保険者機能強化推進交付金(インセンティブ交付金)にかかる指標評価もスタートしているわけですが、指標の中には「介護予防・生活支援サービスにかかる事業評価」も含まれています。

国が予算を使って「旗振り」をしているのにもかかわらず、事業評価が低調というのでは、「何のために総合事業を行なっているのか」が問われても仕方ないでしょう。先に国政調査権の話を出しましたが、中央省庁も自治体も「行わない」であれば、国会が腰を上げざるを得ない状況にあると言えるわけです。

市町村格差は、民間保険なら是正指導レベル

もう一つ注目したいのは、今後の取組み意向も含めた「市町村格差」の問題です。多様なサービスのすそ野を拡大していくうえで、カギとなるのは訪問・通所型ともに「B」(住民主体による支援)ですが、「すでにサービス(B)を実施している市町村」と「(Bを)実施していない市町村」では、「今後の方針」が大きく変わってくる状況が見られます。

前者では、「今後は増やす」とする回答が訪問型で48.0%、通所型で56.5%。一方、後者で「今後は増やす」としているのは、訪問型で9.6%、通所型で9.0%。この開きを見た場合、「実施していない市町村」は、すでに「もう増やすのはあきらめた」という域に入っている可能性があります。それだけ国が提示したミッションには「無理」があるわけです。

このまま「(中長期的に減少傾向にある)従前相当サービスに頼る」という流れが続けば、要支援1・2になったときに受けられるサービス量の格差はさらに拡大していく恐れもあるでしょう。これは介護保険制度そのものの破たんにつながりかねません。民間保険であれば、金融庁などから是正指導が入るレベルといえます。一刻も早く、詳細な事態調査に入ることが急務となっています。

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