要介護認定に被保険者目線での点検を

5月23日に社会保障審議会・介護保険部会が開催されます。4月23日に財務省の財政制度等審議会が社会保障制度改革の提言を出してから、初めての会合となります。財務省側の提言に対し、厚労省の介護保険部会側がどのような議論を展開していくのか。今回は、制度の根幹にかかわる課題を取り上げます。

保険者へのインセンティブ交付金に横やりが

まずは、改めて財務省側の提言に着目します。中でも保険者のあり方、もっと言えば、介護保険の根幹にかかわる課題──「要介護認定」を取り上げましょう。もちろん、財務省提言では直接的に「要介護認定」というテーマを取り上げているわけではありません。ただし、大きくかかわる論点が示されています。それが、「(保険者にかかる)インセンティブ交付金のメリハリ付けの強化」です。

周知のとおり、2018年度の制度見直しにより、保険者機能強化推進交付金(インセンティブ交付金)が設けられました。高齢者の自立支援・重度化防止等に向けた保険者の取組みに対する評価指標が設けられ、その指標に照らした得点に応じて、保険者(あるいは都道府県)に交付金が支給されるしくみです。初年度の交付は、今年3月に決定しています。

この評価指標の「アウトカム指標」に関して、財務省側は問題点を指摘し、設定を見直すことを求めています。そのアウトカム指標に絡んでくるのが、要介護認定の状況です。

要介護認定をめぐる保険者へのプレッシャー

要介護認定にかかるアウトカム指標としては、「介護の手間」を表わす「要介護認定等基準時間」の変化と「要介護認定」の変化にかかる、各変化率が得点化されています。具体的には、この変化率について、全保険者の上位5割を評価して10点とするものです。

財務省側が指摘しているのは、このアウトカム指標にかかる得点が全得点中の5%(保険者の場合)に過ぎないという点です。初年度データによれば、全体が高得点なのに、「要介護認定率が高いまま」という保険者があり、交付金が「要介護認定の改善に結びついていない」ことを問題視しているわけです。

これを受け、財務省側は、アウトカム指標の設定・活用の見直しや配点へのメリハリ付けを求めています。加えて、現行のインセンティブ交付金だけでなく、(前回の見直しでも論点となった)調整交付金の活用にも言及しています。調整交付金にまで手を入れられることになれば、高齢者の要介護認定をめぐる状況改善に向けて、保険者へのプレッシャーがさらに強まる可能性があります。

ここで懸念されるのは、保険者側に「要介護認定率の改善」に向けて、「なりふり構っていられない」という意識が生じることです。たとえば、二次判定で「認定調査の特記事項等を考慮して一次判定よりも重い認定を出す」といった流れに対し、保険者側が意図的に制御をかけるといった不正が生じないかどうか、注意を払う必要が出てくるかもしれません。

改革とのセットで点検のための新たな組織を

もちろん、国としては、「そんなことはありえない」というでしょう。しかし、少なくとも保険者における「不適切なローカルルール」の存在が指摘されるケースを鑑みれば、介護保険事業運営の透明化と被保険者の信頼維持に向けて、あえてもう一歩チェック機能を高める必要があるのではないでしょうか。

現状でも、要介護認定の疑問に対して都道府県の介護保険審査会というしくみはあります。ただし、十分に機能しているとは言い難いのが実情です。今回の財務省側の提言に沿った改革を進めるなら、たとえば、市区町村内に要介護認定点検委員会のような機関を設け、それをセットとした改革にするべきではないかと考えます。この機関には、有識者だけでなく被保険者の代表も参加することで、国民目線によるチェックを強化します。

そもそも介護保険制度は、「国民の共同連帯の理念」にもとづいたしくみです。「共同連帯」とは何を指すのかはさまざまな議論がありますが、少なくとも「お互いに責任をもつ」ことが土台となっています。つまり、制度が適正に運営されるかどうかについて、国民が積極的にかかわる機会が必要になるわけです。

介護保険制度は、そのスタートからの変遷により、極めて複雑なしくみ・加算の体系などにより、主体的に「かかわりにくい」制度となりつつあります。そろそろ、このあたりで「(要介護認定をはじめとした)制度の根幹」に被保険者が積極的にかかわれるしくみを考えるべきではないでしょうか。保険料を負担する国民の制度への信頼を担保することは、まさに国がかかげる制度の持続可能性に直結する問題となるはずです。

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