本当に生活援助見直しを行なうなら

再び財務省・財政制度等分科会の提言を取り上げます。今回は、「軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等」にスポットを当てます。具体的には、要介護1・2の人の生活援助等について、(1)地域支援事業に移行させる、(2)生活援助にかかる独自の支給限度額設定や利用者負担割合の引き上げを行なうことです。

生活援助の見直し、財務省は妥協しない!?

分科会資料では、要介護1・2の人のサービスについて、生活援助だけでなく通所介護も地域支援事業に移行すべきと記されています。しかし、要介護1・2の人が約7割を占める通所介護で、これらの人を地域支援事業(総合事業)に移すとなれば、大きな物議をかもすことになるでしょう。そのような見直しが本当に行なわれるのでしょうか。

これが財務省のやり方なのかもしれませんが、極めてハードルの高い提案(通所介護も移行サービスに含めること)と、それよりは少しだけハードルの低い提案(生活援助を移行させること。ハードルが低いというのは、あくまで相対的という意味です)がセットになっています。これにより、「前者はとても受けられないが後者なら何とか」という社会合意を醸成させるという狙いが感じられます。逆に言えば、「生活援助にかかる見直し」について、それだけ財務省の「今回は妥協しない」という意欲の現れと言えそうです。

現場で起こり得る課題を考えてみる

さて、今後は要介護1・2の生活援助をめぐる各種見直しに向けて、介護保険部会の議論にもプレッシャーがかかってくるでしょう。その際に、ぜひ検討してもらいたい課題がいくつかあります。事業者・職能・当事者団体が財務省提言を押し返そうとするなら、この課題をきちんと提示することが必要でしょう。

それは何でしょうか。まず「生活援助が制限される」、「事業者としても収益の確保が難しい」となれば、2018年度改定で明確化された老計10号の1-6、つまり「自立支援・重度化防止のための見守り的援助」を受け皿として、身体介護に組み替えるという方法が浮かびます。しかし、問題なのは「ヘルパーと利用者が一緒に行なう」としても、現実問題として難しいケースがあることです。

たとえば、認知症の人に対して声かけ誘導を行なっても、心理症状などが不安定の人の場合、どんなに認知症ケアのスキルがあるヘルパーでも「うまく行かない」ことが起こり得ます。また、関節痛や可動域が狭くなっている人の場合、環境が十分に整っていなければ、「本人がかかわれる範囲」がとても狭くなる可能性もあるでしょう。結局、家事全般の中で、総合事業を間にはさみながらの「ぶつ切り」サービスになってしまうわけです。

もう一つの問題が、栄養改善です。配食サービスが(総合事業などで提供されていない地域の場合)全額自費である点で、生活困窮者にとっては、生活援助の調理で補完しながら栄養確保を図っていかなければなりません。この部分を総合事業できちんと補えることができるのか。仮に栄養状態の悪化につながれば、国が示している自立支援・重度化防止策とは真逆の施策となってしまいます。

激変緩和のために必要なことは?

ここで、(あくまで個人的な提案ではありますが)以下のような条件を考えてみます。

まず、認知症の診断を受けた人、あるいは疾患・障がいによって可動域が極めて狭くなっていると診断された人については、今回の生活援助の見直しから外すこと。加えて、その診断が適正になされるよう、医師の診断書をチェックする第三者機関(介護認定審査会以外で医療系識者により構成)を設置し、そのための予算を国が別途立てることです。

それが難しいのであれば、以下の3つの新サービスを創設することが求められます。

1つは、認知症対応型の訪問介護の創設。これは、日々の利用者の状態に応じて身体介護と生活援助を柔軟に組み合わせるしくみとします。定期巡回・随時対応型サービス資源が豊富な地域なら、認知症にかかる専用区分を設けるという方法も考えられるでしょう。

2つめは、痛みがあったり可動域が狭くなっている人(あるいは精神疾患などにより、家事等の参加意欲の継続が難しい人)を対象としたものです。具体的には、訪問介護の見守り的援助や総合事業へのバトンタッチまでの間、当事者が参加しやすい生活環境を整えたり集中的なリハビリ・ケアを行なうサービスです。家事参加に向けた環境整備のための初期集中支援サービスというわけです。

3つめは、栄養状態の悪化を防ぐための全国一律資源を確立すること。具体的には、低栄養リスクがある利用者を対象として、配食サービスを介護給付費に加えることです。

財務省としては、「これでは財政改善の効果が打ち消されてしまう」と考えるかもしれません。しかし、国民に対して責任をもった施策を展開するのなら、こうした激変緩和策を整え、そのためのコストも想定するという道筋は欠かせないはず。そのバランスを取りつつ財政健全化を図るのがプロの施策者というものでしょう。上記のような私案は稚拙ですが、介護保険部会では業界・職能・当事者団体などの知恵を結集してもらいたいものです。

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