2021年度の現場改革に必要な土台

与党・自民党の厚労部会で、社会保障改革に向けた政策提言の取りまとめが進んでいます。具体的な課題としては、ICTやロボット、センサーなどのフル活用による基準緩和や介護現場のペーパーワークの負担軽減などが示される予定です。2021年度の改定も視野に入れ、こうした動きに潜む課題について考えます。

与党改革案。目的と手段はつながっているか

介護現場の改革を考える場合、常に立ち返らなければならないのは、それは「誰の、何のため」なのかという原点です。社会保障上の共通認識になっているのは、現役世代が将来的に減少していく中で、彼らの労働力や社会保障費にかかる負担を軽減しつつ、サービスの質を一定以上確保することでしょう。

問題は、その目的と手段がきちんとした線でつながっているのかどうか。ケアマネジメントでもそうですが、利用者の意向把握や課題分析がしっかり行なわれないまま、意向に沿わない目標や課題解決とズレた支援内容(手段)を設定すれば弊害も大きくなります。

では、今回の与党PTが示した「ペーパーレス化」という目標や「テクノロジーの活用」という手段(具体的な支援内容)は、どうでしょうか。現場でサービスを提供する職員やサービスを受ける利用者が、真に望む「課題の解決」につながるのかどうか。この見極めが甘ければ、「ひな型のままの目標・サービスありき」という(国が諫めている)不適切なケアプランと同じものになってしまいます。

施策側の「操作」だけが先に立つという懸念

たとえば、テクノロジーの活用と基準緩和をセットにして現場の人材不足に対応するという場合、施策側が操作しやすいのは「基準緩和」です。ICTやロボット、センサーの普及はインフラ整備の話ですから、一定の資力や受け入れ体制があるか否かという不確定要素が多く、施策側が「無償でインフラ整備を全事業所・施設に行なう」という話にでもならなければ、操作することが困難でしょう。

また、ペーパーレス化で現場の負担軽減を図り、サービスの質向上を目指すというケースでも、施策側の操作は「ペーパーレス化」という部分にとどまります。そこで問題になるのは、現場従事者や利用者を「守る」という視点に立った書類の整理・再編によるペーパーレス化が果たせるのかどうか。「どの書類を残し、どの書類を(職員・利用者保護のために)残すのか」という視点が、施策側の都合だけで進められてしまえば、「ペーパーレス化を実現した」という成果が強調されるだけで、現場は置き去りとなりかねません。

ケアマネジメントでいえば、ケアマネ権限でサービス調整だけを進め、この「操作」をもって「ケアマネの役割を果たした」と評価するのと同じことになります。これを防ぐうえで必要なのがモニタリングであり、そのモニタリングの質を担保するためにケアマネには多様な運営基準が課せられているわけです。

制度上の「実験」に歯止めをかける法体系を

このたとえに沿うならば、施策側が「操作できる部分」について、必要な歯止めをまず整えなければなりません。基準緩和を進めるのであれば、「介護従事者と利用者がともに不利益を受けないための最低限の基準ライン」を法律で定めることです。たとえば、「夜勤体制は必ず2人とし、それを可能する報酬設定を国に義務づける」という具合です。

書類削減であるならば、介護事故が裁判に発展した際に、証拠となる書類をどう整理するかが大きなポイントとなります。ここで真に従事者保護を進めるのであれば、書類削減とともに「従事者が安易に刑事裁判の被告にならない」よう、刑事訴訟を制御するしくみが必要でしょう。たとえば、介護事故にかかる(警察が介入しない)公的な第三者機関を制度上で定め、その調査結果により従事者の刑事被告化に歯止めを設けるという具合です(もちろん、これは業務上の過失という範囲の話で、故意の犯罪などは除きます)。

こうした「施策側に歯止めをかける」というさまざまなしくみを個別に定めていては、再現がありません。だからこそ、介護従事者と利用者の保護をセットとした介護現場の救済・保護を目的とした国会制定の法体系が望まれます。介護現場の改革を進めるのなら、これを真っ先に視野に入れるべきでしょう。

2021年度の報酬・基準改定に向けては、インセンティブ強化を軸としたさまざまなしくみの導入が想定されます。しかし、誤解を恐れずに言うなら、インセンティブというのは施策側が現場に仕掛ける「実験」であり、「実験」は常に無制限の拡大につながります。だからこそ、まずはその「歯止め」から考えること。これこそが、介護現場のイメージアップにもつながる近道ではないでしょうか。

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