18年度処遇状況等調査を読みとく(1)居宅系小規模事業所の「置き去り感」

2018年10月実施の介護従事者処遇状況等調査の結果が報告されました。17年度の期中改定による介護職員処遇改善加算の拡充から、1年半が経過した時点での調査となります加算取得事業所・施設における、(月給・常勤の)介護職員の月額平均給与が初めて30万円に到達したことがトピックとなっています。

加算未届け事業所が、居宅2サービスで1割

まず注意したいのは、調査対象となる事業所・施設の抽出法です。サービスごとに抽出率が異なり、介護保険施設では(全施設数の)4分の1、居宅系サービスでは20分の1となっています。施設・事業所数や1施設・事業所あたりの常勤換算職員数に大きな差がある部分を均したわけですが、居宅系事業所において調査から外れた事業所数が極めて大きくなります。実態をどこまで反映しているかについて、特に居宅系に注意が必要でしょう。

その居宅系(訪問・通所介護)についてですが、加算I~Vまでのいずれも「届出をしていない」事業所は、訪問介護で11.3%、通所介護で10.3%と全体の1割にのぼります。これを本来の事業所数で計算すると、前者で約3800事業所、後者で約4500事業所。つまり、全国で8000件前後の事業所が処遇改善加算は取得しておらず、そこで働く介護職員には恩恵が及んでいないことになります。

ちなみに、17年調査では上記の割合は訪問介護で11.8%、通所介護で10.3%と、この1年でほとんど変わっていません。居宅系で「加算の届出をしていない」事業所が固定化されている状況も浮かびます。以上を頭に入れたうえで、どのような事業所が特に「加算取得できない」状況にあるのかを掘り下げます。

小規模事業所の加算取得を阻む「煩雑事務」

わかりやすいのが、事業所の規模別の調査です。たとえば、訪問介護で最も規模の小さい「月200回以下」では、「届出をしていない」割合は29.5%、約3割まで上昇します。通所介護で最も規模の小さい「月200人以下」では20.1%、やはり全体の割合の約2倍へと膨らみます。ある程度予想されるとはいえ、小規模事業所ほど、処遇改善加算の恩恵を受けるのは改めて厳しい状況が浮かびます。

「そうした事業所の母数が低い(だから、割合も大きくなる)のでは」と思われるかもしれません。しかし、200回あるいは200人単位で区切ってある規模を見ると、他の規模区分とさほど大きな変化はありません。つまり、加算の届出をしていない小規模事業所は、一定のシェアを形成していることになります。

では、なぜ「(すべての加算区分について)届出を行わない」のでしょうか。特養ホームについては、勤務する職種が多いこともあり、「対象の制約のため困難」が44.6%にのぼります。これに対し、訪問介護は19.7%、やはり勤務職種の多い通所介護でも27.1%にとどまります。この2つの居宅系については、むしろ「事務作業が煩雑」が圧倒的に多くなっています。訪問介護では56.9%、通所介護では54.0%という具合で、特養ホームの22.5%と比べても割合の高さがわかります。

加算未届けでも賃金アップが求められる現実

ちなみに、国は17年度より介護職員処遇改善加算の取得促進支援事業を実施しています。これは、加算未届事業所などに対し、加算の取得を支援する事業です。たとえば、自治体からの委託で社会保険労務士が事業所を訪問し、加算の取得等にかかる助言・指導・各種書類の作成補助を行なうという具合です。 中規模以下の事業所で「事務作業が煩雑」が加算取得を困難しているとなれば、上記のような事業も重要な支援策となるはずです。

ところが、同事業前の16年調査と比較すると、恩恵を受けているのは訪問介護で600回超、通所介護で600人超など大規模事業所にとどまる状況が浮かんでいます(通所介護の16年調査は日数データのため一概に比較できませんが、大規模という点に変わりはありません)。いずれにせよ、肝心の中規模以下の事業所は、加算取得はおろか「取得支援策」の恩恵も十分に受けていないことになります。

このように、今回の調査では、「加算取得によって介護職員の給与が上がった」という点のみに目を奪われず、小規模事業所の「置きざり」感が際立つ点に注意が必要です。もちろん、そうした事業所が「職員の賃金改善に興味がない」わけではありません。処遇改善加算の拡充にかかわらず「給与を引き上げた(予定)」という事業所は、先の最も小規模の居宅系事業所でも5割に達しているからです。

賃金を上げなければ、この人材不足の時代に対応できない。でも、加算取得や取得支援を受けられる状況にない──そうした事業所が今後経営を維持できるのかどうか。この点については、実は今調査での居宅介護支援事業でもうかがえる懸念です。次回は、その居宅介護支援について取り上げましょう。

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