新加算は介護職員のためのもの。ケアマネのためでは決してない


《 社保審・介護給付費分科会 6日 》

介護職員の賃上げに向けて今年10月に新設される新たな処遇改善加算の内容が決まりました。6日の審議会で算定要件もほぼ全て明らかになったので、あとは解釈通知やQ&Aを待つだけといったところでしょうか。

前回のエントリーで書いた通り、私は居宅介護支援が新加算の対象から外れたことはやむを得なかったと考えています。

《前回のエントリー》
ケアマネと介護福祉士の賃金が逆転する、なんてセコい話はしないで欲しい

人手不足なのはあくまで介護職員。少ないリソースをそこに重点配分するのは理にかなっています。新加算はもともと介護職員のためのもの。決してケアマネのためではありません。

「セコい」ケアマネはいないと信じている

そうは言ってもケアマネの担い手がいなくなってしまう、という指摘がありますが、一部の地域を除いて短期的には大丈夫だろうと思っています。介護業界ではまだまだトップクラスの給料ですし、リーダー級の介護福祉士が新加算の効果でそれを上回ったとしても、そう大きな差にはなりません。年収で概ね20万円、30万円といったところでしょう。この逆転に納得がいかない、あるいは苛立っているような「セコい」ケアマネはいないと信じています。

* セコいという言葉が侮辱的だという指摘がありましたが、もっと丁寧に了見が非常に狭いと言った方が良かったでしょうか?

そもそも、単純に給料の良し悪しだけをみて職種を選ぶ人ばかりではありません。ケアマネの場合、「体力的・時間的に介護職は厳しくなってきたから」、「その仕事や担う役割に魅力を感じたから」という人が多いですよね。今後、一握りの介護福祉士が少しだけ高い給料をもらうようになりますが、大半の人は変わらず責務を果たし続けていくでしょう。

もっとも、長期的にみるとケアマネが足りなくなっていく可能性は高いです。今年度のケアマネ試験の結果は衝撃的でした。自分のキャリアデザインを改めて考え直す人は今後さらに増えるでしょう。

将来的に問題が顕在化しないよう、次世代を担う優秀なケアマネをしっかり育成・確保していく視点が大事です。質の高いサービスを提供するケアマネを評価し、その仕事量に見合った処遇を担保していくことが重要ではないでしょうか。

経営者の腕のみせどころ

新加算で賃金バランスが崩れて現場に亀裂が入る、という問題提起をする人もいるようです。これはぜひ現場でうまく解決して頂きたい。まさに経営者・管理者の腕のみせどころではないでしょうか。

私には今回の処遇改善が、いわば介護福祉士を準公務員化するような施策にみえます。本来なら労使間で決めるべき給料水準に、国がこのうえなくはっきりと、しかもかなり強めに介入してくるわけですから。リーダー級なら年収は440万円以上、などと明確に指示してきました。こういうこともなかなか珍しいですよね。

何が言いたいかというと、そんな力業を放たないといけないくらい介護職員の不足が深刻だということです。既に危機的な状況にあってこのままでは崩壊する―。これが業界のコンセンサスです。

確かに、不公平感を生まないように差配するのは容易ではないでしょう。最初のうちは多少の混乱が起きてしまうかもしれません。ただもう決まったことなので、事業者・管理者には全体をうまくまとめて良い方向へ持っていくことが期待されています。そもそも、ケアマネなど他の専門職も今回の新加算を肯定的に受け止めている人が大多数ですから、そんなに大きなハレーションは生じないでしょう。

もちろん国の施策にも不十分さはあります。厚生労働省には現場の課題をきめ細かく把握して頂きたい。必要な改善策は次回の改定で速やかに講じるべきです。

若者を優先すべきだった

私は今回の新加算を基本的にかなりポジティブに捉えています。ただしベテラン、あるいはリーダー級を最優先させた判断はあまり評価できません。もっと若者に強く響く手法を選択すべきでした。

具体的には勤続5年以内の介護職員にプライオリティを置き、ベテランはその次という順序にすべきだったと考えています。まずは若手の給料を引き上げ、そこから緩やかに上がっていく傾斜を作る―。そんなイメージです。

こちらの方が次世代を担う若者を招く効果が大きいでしょう。ベテラン介護福祉士だけが不自然に突出する事態も避けられました。リーダー級はどの事業所にも不可欠な存在ですから、その賃上げはある程度事業者の努力に任せてもよかったのではないでしょうか。

今回の新加算では、これまで長いこと歯を食いしばって懸命に現場を支えてきた介護福祉士が報われます。それは本当に歓迎すべきことで素晴らしい。ただ残念ながら、新規参入を増やす呼び水としては弱く人手不足は解消しません。政府は必ず追加策を検討せざるを得なくなるでしょう。

マイナス改定はあり得る

何よりも大事なのは次の2021年度改定です。さらなる処遇改善、今度は居宅のケアマネや若手も含めた業界全体の処遇改善を図り、人材確保で結果を出さないといけません。

ましてや介護報酬の引き下げなどもってのほか。今回の新加算の効果も弱め、担い手不足で日本の介護を崩壊させることになります。それはもう本当にやめてください。

ただし、事業者の皆さんにはマイナス改定も念頭に置いておくことをお勧めします。私は絶対反対ですが、色々と政治状況などを勘案するとあり得る話だと思いますので…。

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