介護予防と保健事業一体化の先に…

2021年度の介護保険制度見直しに向けて、いよいよ介護保険部会の議論がスタートします。今年の冬頃にとりまとめを行ない、それをもとに今年から来年(20年)にかけての法案化が予定されています。今後、どのような点がポイントになるかを掘り下げます。

目標は、2040年までに健康寿命を3年延伸

今回は第1テーマである「介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)」を取り上げます。このテーマは、経済財政諮問会議等で示された「2040年までに健康寿命を3年以上延伸し、平均寿命との差の縮小を目指す」という政策目標にもとづくものです。ちなみに、「健康寿命」とは、「疾病等による日常生活の制限」が生じていない期間のことを指します。

「2040年までに3年以上延伸」といわれてもピンと来ないかもしれませんが、これには段階があります。昨年閣議決定された「未来投資戦略2018」では、20年までに1歳以上、25年までに2歳以上というステップが示されています。団塊世代が全員75歳以上となる25年までの加速が急な点から、これが実質的な目標年となっていることがわかります。

テコ入れ対象となる主な施策が、介護保険の地域支援事業の一つである介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)です。具体的には、これを国保や後期高齢者広域連合の保健事業と一体的に実施することで、フレイル(加齢による活力の衰えや疾病等で生活機能が低下していること)状態にある高齢者の健康寿命の延伸を目指すことになります。

今国会の提出法案、条文とよく読むと…

さて、間もなく厚労省では、「(総合事業のうちの)一般介護予防等の推進方策に関する検討会」が開催される予定です。また、現在開催中の国会では、先の「保健事業と介護予防の一体的実施」に向けて、健康保険法等の一部を改正する法律案が提出されています(介護保険法の一部改正も含まれています)。

前者が対象としている一般介護予防は、すべての1号被保険者を対象とした事業です。住民主体の通いの場などが想定されがちですが、それ以外にも介護予防の普及啓発や地域リハビリ活動の支援なども含まれます。上記の開催予定の検討会も、より幅広い一般介護予防のあり方まで議論されると思われます。

さて、ここで注意したいことがあります。新設置の検討会が「一般介護予防等」となっているため、改正法の「保健事業と介護予防の一体的実施」も一般介護予防が対象と考えてしまいがちです。しかし、法案をよく読むと、実はもっと深い意味が見てとれます。

介護保険法の改正部分では、以下のようになっています。「市町村は、地域支援事業を行なうにあたっては、(中略)効果的かつ効率的で被保険者の状況に応じたきめ細かなものとするため、(後期高齢者広域連合の)高齢者保健事業および国民健康保険保健事業と一体的に実施するよう努めるものとする」という具合です。これによれば、対象はあくまで「地域支援事業」であり、「一般介護予防」はもとより「介護予防・日常生活支援総合事業」というくくりに限ってはいません。

今法案が20年予定の改正にどうつながる?

ちなみに、改めて先の検討会の名称を見ると、「一般介護予防“等”」となっています。この「等」は何を指すのでしょうか。先の法案との整合性を考えれば、介護予防に資する地域支援事業全般、つまりリスクの高い人が対象となる「介護予防・生活支援サービス」も含まれる可能性も見てとれます。

ややうがった見方かもしれませんが、今改正で「保健事業との一体的実施」という道を開いておけば、20年の見直しに向けてさまざまな仕掛けが施しやすくなります。たとえば、改めて首相官邸や財務省などから「給付サービスから総合事業への対象拡大」というプレッシャーがかかったとします。これに対し、「重度化防止の効果が薄れる」という批判があったとして、「保健事業で下支えをする」という論拠を打ち出すことができるわけです。

この場合の「総合事業への拡大」ですが、「要介護1・2程度までの軽度者も含む」という案がよく出されます。しかし、それだけでなく、たとえば「個別機能訓練などを行なっていない通所介護などは、総合事業に移行させる」などの話も出てくるかもしれません。

なぜなら、政府が進めつつあるADLの維持・改善等にかかる「アウトカム評価」では、通所介護でいえば「(個別の達成度合いにどう照らすかという点で)個別機能訓練の体制」が必須とならざるを得ないからです。「それができない」事業所は、総合事業に移したうえで(医療職・リハビリ職等がかかわる)保健事業に下支えさせるという流れも考えられるでしょう。他施策の行方と絡めつつ、今法案の意図にさらなる注意が必要です。

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